目次へ

>> 1011

ポートフォリオの期待リターン1 「証券が2つの場合」


前回まで、「個別株の情報がどう与えられるか」を、5つの企業の株式があるという例で見てきました。今回から、それらを組み合わせた「ポートフォリオ」の期待リターンやリスクがどうなるかという話に移っていきます。ただ、たくさん株があると話が複雑になるので、まずは2つだけの場合を考えてみましょう。


トヨタとマクドナルドの2種類しか株式がない状況を考えてください。それぞれのリターンを R_1R_2 と表しましょう。期待リターンは期待値の記号を使ってそれぞれ E[R_1]E[R_2] と表すか、またはギリシア文字の \mu(ミュー)を使って、\mu_1\mu_2 と表します。


2つの株のポートフォリオ・ウェイトは w_1w_2 とおくことにします(w_1+w_2=1)。すると、ポートフォリオのリターンw_1R_1 + w_2 R_2 です。これの期待値を \mu_P とおくと 

    \begin{eqnarray*}\mu_P &=& E[w_1R_1 + w_2 R_2] \\&=& w_1E[R_1] + w_2E[R_2]\\&=& w_1\mu_1 + w_2\mu_2\end{eqnarray*}


です。2つめのイコールは「線型結合の期待値」の公式を用いています。


たとえばトヨタとマクドナルドに同額ずつ投資したポートフォリオであればw_1=w_2=1/2 ですから、ポートフォリオの期待リターンは、単純にトヨタの期待リターン \mu_1 とマクドナルドの期待リターン \mu_2 の平均だということになります。


ここでちょっと、中学校の数学で教わった「食塩水の法則」を思い出してください。濃度の異なる食塩水を混ぜたとき、出来上がった食塩水の濃度は「加重平均」で求まると教わりました。例えば、「10%と20%を半々で混ぜれば、15%になる」と言った具合です。今日の内容を言い換えれば、株の期待リターンに関しても同じようなことが成り立つということになります。


でも、この「食塩水の法則」は、ポートフォリオのリスクに関しては当てはまりません。次回は、ポートフォリオのリスクについて解説したいと思います。

>> 平均分散分析(4)ポートフォリオのリターンの標準偏差1 「証券が2つの場合」