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「連続主体」の仮定


要点
「連続主体 (continuum of agents)」の仮定とは、「人間がたくさんいる」という仮定であり、より具体的には「ちょうど確率どおりの割合で実現する」という仮定である。



今回は、マクロ経済学理論でしばしば登場する「連続主体 (continuum of agents)」の仮定について説明します。経済学で「主体 (agent) 」とは、消費者や投資家といった人間のこと、「連続 (continuum)」は、実数直線上の区間(たとえば[0,1]区間)のことです。「連続主体」という言葉には、[0,1]区間の実数(0.5, 1/3, 6/7など)と同じくらい無限にたくさんの人がいると仮定しよう、という意味合いがあります。


あくまでモデル世界の中だけの話ですが、なぜそんな変な仮定をするのかというと、それで数式がずいぶん単純化されるからです。その理由をこれから説明しましょう。


女の子と男の子の赤ちゃんが生まれる確率がそれぞれ50%であったとしても、ある村で生まれる10人の赤ちゃんの男女比が、ちょうど半々になるとは限りません。60%が男の子、ということもあり得ます。


ただ、生まれる赤ちゃんの数が多い場合は、60%が男の子なんてことは確率的にあり得ません。人数が多ければ多いほど、実際に実現する比率は、確率が示す比率に近くなります。統計学ではこの事実を「大数の法則」と言います。


マクロ経済学は一国の経済を扱う学問ですから、人口は何万人もいると想定されます。そこで、「実際の人数も期待値通りになる」と仮定してしまいます。マクロ経済学のモデルでは、女児が生まれる確率が50%ならば、実際に生まれる赤ちゃんもちょうど50%が女の子だと仮定します。失業者たちが各々60%の確率で仕事を見つけるならば、彼らのちょうど60%が仕事を見つけると仮定します。これが「連続主体の仮定」です。計算を簡単にするための近似だと考えてください。