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失業率の変遷式



前回の舞台設定を踏まえ、これからサーチ・モデルの方程式を1つずつ解説します。今回は1本目、「失業率の変遷式」と呼ばれる式です。


時間が t=1,2,3,\dots と流れていきます。前回も述べたように、(就業者と失業者を合わせた)労働者の人口を1に基準化します。そして、t 時点での失業者の数を u_t とおきます(u はunemployedの頭文字)。すなわち

失業者の数:u_t
就業者の数:1-u_t

です。労働者人口を1とすると便利なのは、u_t が失業者数と失業率の両方を表せることです。例えば人口が1万人で、u_t=0.05なら、失業者数は0.05万人で、失業率は0.05です。(就業者数は0.95万人、就業率は0.95となります。)


時点 t で起こることは以下の通りです。まず、u_t 人の失業者たちは、それぞれ確率 p でジョブを見つけて就業者となるか、確率 1-p で見つけられないかです。したがって、失業者の中でジョブを見つけられない人の数の期待値は (1-p)u_tということになります。


一方、(1-u_t) 人の就業者たちは、それぞれ確率 \delta でジョブを失うか、確率 1-\delta でジョブを維持するかです。よって、ジョブを失う人の数の期待値は \delta (1-u_t) 人です。


両者を合計します。というのも、次期 t+1 時点の失業者の数 u_{t+1} は、「前から失業している人たち」と「t 時点でジョブを失ってしまった人たち」の和なので、期待値では

    \begin{eqnarray*}u_{t+1} = (1-p)u_t + \delta (1-u_t)\end{eqnarray*}


が成り立ちます。これが失業者数や失業率の変遷を記述した式です。(*注


最後に、定常状態における失業率を求めましょう。定常状態 (steady state) とは、「今期がこの値なら、次期もその値にとどまる」という値のことです。失業率は、いずれ定常状態に落ち着きます。


定常状態の失業率を u と置きましょう。「今期がこの値なら、次期もその値」ということなので、u_{t+1}u_t の双方に u を代入すれば、定常状態の失業率は

    \begin{eqnarray*}u = (1-p)u + \delta (1-u)\end{eqnarray*}


という式を満たすことが分かります。これがサーチ・モデルの連立方程式の1つめの式です。少し変形すると、u = \frac{\delta}{p+\delta} です。ここで、p はジョブを見つける確率、\deltaはジョブを失う確率ですから、前者が相対的に大きければ、定常状態での失業率は低くなると分かります。


次の式を説明するための準備として、次回は「マッチング関数」を説明します。

>> 労働市場論(サーチ・モデル)(5)マッチング関数

(*注)本来この式は期待値を表した式です。実際の人数は期待値通りになるとは限りませんが、マクロ経済学のモデルでは、「人間がたくさんいる」という “連続主体の仮定” というのを置いて、実際の人数も期待値通りになるとみなします。