目次へ

10111213補1補2補3

マッチング関数


今回は、サーチ・モデルを構成する数々のアイディアの中で、最も重要と言っても過言ではない「マッチング関数 (matching function)」について説明します。


マッチング関数は、求職者数と求人数を入れると、マッチ(結ばれた労働者とジョブのペア)の数が出てくる関数です。基本のサーチ・モデルでは「求職者=失業者」なので、失業者数を u,求人数を v として、マッチング関数を M(u, v) のように表します。例えば「0.2万人の失業者がいて、0.5万件の求人があるときは、 ◯◯万組のマッチが生まれる」といったことを教えてくれる関数です。


M(u, v) は、uv のそれぞれに関して増加関数であると仮定されます。求職者や求人が多いほど、成立するマッチの数も多いという意味ですが、これは自然な仮定でしょう。


また、通常 M(u, v) は「一次斉次 (homogenous of degree one)」であると仮定されます。これは、uv が同時に 2倍,3倍,m 倍になった場合は、成立するマッチの数も2倍,3倍,m 倍になるという仮定です。


一次斉次の関数の典型例は、マクロ経済学で最も頻繁に使われる「コブ・ダグラス型」です。(なのでこのシリーズでもマッチング関数としてコブ・ダグラス型を使います。)コブ・ダグラス型は、

    \begin{eqnarray*}M(u, v) = z u^{1-\alpha} v^{\alpha}\end{eqnarray*}


と表されます。ここで z は正の定数であり、べき数 \alpha は0と1の間の定数です。この関数が一次斉次であることを確めるには、uv の双方を m 倍してみればよいです。

    \begin{eqnarray*}M(mu, mv) &=& z (mu)^{1-\alpha} (mv)^{\alpha}\\&=& zm^{1-\alpha}u^{1-\alpha}m^{\alpha}v^{\alpha}\\&=& m^{1-\alpha}m^{\alpha}zu^{1-\alpha}v^{\alpha}\\&=& m^{1-\alpha+\alpha} zu^{1-\alpha} v^{\alpha}\\&=& mzu^{1-\alpha} v^{\alpha}\\&=& mM(u,v)\end{eqnarray*}


となり、確かに関数の値がもとの m 倍になります。


今日の内容を要約すると、「マッチング関数とは、失業者数 u と求人数 v を入れるとマッチ数が出てくる関数で、増加関数で、かつ一次斉次と仮定される」です。


次回はこのマッチング関数を元に、サーチ・モデルの連立方程式の、2〜4番目の式を導出します。

>> 労働市場論(サーチ・モデル)(6)「ジョブを見つける確率」と「ジョブが埋まる確率」