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参入のゼロ利潤条件


サーチ・モデルの最後の式を説明します。


マッチング関数を勉強したとき、新しく生まれるマッチ数は、失業者の数 u と、求人中のジョブの数 v で決まると説明しました。定常状態における u がどうなるかは第4回で説明しました。今回のテーマは、求人数 v がどのように決まるかです。


サーチ・モデルの仮定の1つに、休止状態のジョブと欠員状態のジョブの区別がありました。休止状態のジョブは採用活動すらしていないのでコストはかかりませんが、欠員状態(=求人中)のジョブには毎期採用のコストがかかります。コストはかかるのですが、うまくいけば労働者とマッチする可能性があります。


求人中のジョブの数が多いときは、コストを払って採用活動をしても、労働者とマッチできる可能性は低いでしょう。求人中であることの割引現在価値 V_0 はマイナスとなり、採用活動はしない方がいいということになります。つまり、欠員状態から休止状態に変わるジョブが現れます。


逆に、求人中のジョブが少ないときは、採用活動をすれば短期間で労働者とマッチするでしょう。求人することの割引現在価値 V_0 はプラスであり、企業は採用活動をした方がいいということになります。この場合、休止状態から欠員状態に変わるジョブが現れます。


サーチ・モデルのアイディアは、V_0 の値は、採用活動を諦めたときの価値(すなわち0)に落ち着くはずだというものです。V_0>0 であれば「採用活動しよう」という企業が現れ、V_0<0 であれば「採用活動はやめよう」という企業が現れます。ちょうど V_0=0 となるところまで求人は起こるというのがサーチ・モデルの仮定です。つまり、連立方程式の最後の式は

    \begin{eqnarray*}V_0=0\end{eqnarray*}


です。これが間接的に定常状態における求人数 v を決めてくれます。採用活動への参入じたいがもたらす利潤が、正でも負でもなくちょうどゼロであるという意味で、「参入のゼロ利潤条件(“zero-profit of entry”) 」と呼ばれています。


これでイントロで予告した10本の式の説明が終わりました。あとは解くだけです。その前に式と変数をまとめましょう。

>> 労働市場論(サーチ・モデル)(10)モデルを振り返る