1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,補1,補2,補3
「ジョブを見つける確率」と「ジョブが埋まる確率」
今回は2つの確率を定義し、サーチ・モデルの連立方程式の2~4番目の式を導出します。
失業者が1期間のあいだに就業できる確率を と置きます。例えば、もし100人のうち40人がジョブを見つけられるなら は0.4です。 は「ジョブを見つける確率 (Job-finding probability)」と呼ばれます。
一方、欠員状態のジョブ(求人中のジョブ)が1期間のあいだに労働者とマッチできる確率を と置きます。もし100個のジョブのうち、20個が労働者とマッチできるなら、 は0.2です。 は「ジョブが埋まる確率 (Job-filling probability)」と呼ばれます。
今回は、この と を、前回紹介したマッチング関数から導出します。マッチング関数の仮定により、失業者の数が ,求人中のジョブの数が のとき、1期間中にマッチする労働者とジョブのペアの数は です。このとき「ジョブを見つける確率」 はいくつでしょうか。
失業者 人のうち 人がジョブとマッチするので、マッチできる人の割合である が「ジョブを見つける確率」です。シミュレーションのためには を具体的に仮定する必要があるので、マクロ経済学でよく用いられるコブ・ダグラス型関数()を使うことにします。そうすると、
となります。
次に、「ジョブが埋まる確率」 を考えましょう。 個のジョブのうち、 がマッチするわけですから、ジョブが埋まる確率は です。コブ・ダグラス型のマッチング関数の場合には
となります。
「ジョブを見つける確率」も「ジョブが埋まる確率」も、 の関数となっています。 は求人数を求職者数で割ったもので、有効求人倍率(=求職者ひとりあたり何件の求人があるか)に相当します。 なので、 は の増加関数、 は の減少関数です。有効求人倍率が上がると、労働者の方はジョブを見つけやすくなりますが、企業の方は人を見つけにくくなるというわけです。これは私たちの直観と合致しており、マッチング関数は現実をうまくモデル化していると言えます。
有効求人倍率 を改めて と置くことにしましょう。すると
となります。これがイントロで示した10本の式のうちの3本です。
次回は「労働者の生涯所得」と「ジョブの現在価値」を考えます。
>> 労働市場論(サーチ・モデル)(7)「労働者の生涯所得」と「ジョブの現在価値」