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マッチング関数
今回は、サーチ・モデルを構成する数々のアイディアの中で、最も重要と言っても過言ではない「マッチング関数 (matching function)」について説明します。
マッチング関数は、求職者数と求人数を入れると、マッチ(結ばれた労働者とジョブのペア)の数が出てくる関数です。基本のサーチ・モデルでは「求職者=失業者」なので、失業者数を ,求人数を として、マッチング関数を のように表します。例えば「0.2万人の失業者がいて、0.5万件の求人があるときは、 ◯◯万組のマッチが生まれる」といったことを教えてくれる関数です。
は、 と のそれぞれに関して増加関数であると仮定されます。求職者や求人が多いほど、成立するマッチの数も多いという意味ですが、これは自然な仮定でしょう。
また、通常 は「一次斉次 (homogenous of degree one)」であると仮定されます。これは、 と が同時に 2倍,3倍, 倍になった場合は、成立するマッチの数も2倍,3倍, 倍になるという仮定です。
一次斉次の関数の典型例は、マクロ経済学で最も頻繁に使われる「コブ・ダグラス型」です。(なのでこのシリーズでもマッチング関数としてコブ・ダグラス型を使います。)コブ・ダグラス型は、
と表されます。ここで は正の定数であり、べき数 は0と1の間の定数です。この関数が一次斉次であることを確めるには、, の双方を 倍してみればよいです。
となり、確かに関数の値がもとの 倍になります。
今日の内容を要約すると、「マッチング関数とは、失業者数 と求人数 を入れるとマッチ数が出てくる関数で、増加関数で、かつ一次斉次と仮定される」です。
次回はこのマッチング関数を元に、サーチ・モデルの連立方程式の、2〜4番目の式を導出します。
>> 労働市場論(サーチ・モデル)(6)「ジョブを見つける確率」と「ジョブが埋まる確率」