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舞台設定


まずは、サーチ・モデルの世界の舞台設定を説明します。視覚的なイメージを持つことを心がけましょう。


時間が t=1,2,3,\dots と流れていきます。サーチ・モデルの世界にはたくさんの労働者がいます。労働者の人口は1に基準化します。(さしあたり1万人とか、1億人とか、大きい数字をイメージしてください。)


各時点において労働者は、就業中か失業中かのどちらかです。就業者は賃金 w を受け取り、失業者は失業便益 b を得ます(失業給付金、家事による節約、等々)。ここでは w>b,すなわち就業によって得られる賃金の方が高いと仮定します。



失業者は、確率 p で期間中にジョブを見つけて就業者となるか、確率 1-p で失業したままかです。p は「ジョブを見つける確率 (job-finding probability)」と呼ばれます。



一方、就業者は、期間中に確率 \delta でジョブと離れて失業者となるか、確率 1-\delta でジョブとのマッチを維持するかです。転職のためにジョブを辞めるケースは考えません。\delta分裂確率 (separation probability) と呼ばれます。



次にジョブの方です。「ジョブ」の単位は「1ジョブ=1人」とします。1つのジョブが2人の労働者を雇ったり、1人で2つのジョブを掛け持ちしたりすることはありません。各ジョブは以下の3つのうちのいずれかの状態だとします。

  1. 雇っていないし、求人もしていない(“idle”,「休止状態」)
  2. 雇っていないが、求人している(“vacant”,「欠員状態」)
  3. 1人雇っている(“filled”,「充足状態」)


休止状態のジョブと欠員状態のジョブをまとめて「埋まっていないジョブ」と呼ぶこともあります。


休止状態のジョブは何もしません。欠員状態のジョブは、「求人・採用活動のコスト」 k を毎期支払う必要があります。一方、充足状態のジョブは毎期 y 円を売上げ、労働者に w 円の賃金を支払った残りの y-w 円を利益とします。



欠員状態のジョブは、期間中に確率 q で労働者とマッチして充足状態となるか、確率 1-q で欠員状態のままかです。



充足状態のジョブは、確率 \delta で労働者と別れて欠員状態となるか、確率 1-\delta で労働者とのマッチを維持するかです。\delta は労働者の所でも出てきた分裂確率です。



たくさんの労働者とジョブが、毎期くっついたり離れたりしながら、それぞれの状態に応じて受け取るべきものを受け取っている(あるいは支払っている)ところをイメージできるようになったでしょうか。


次回は、この世界において失業率がどう変遷していくかを説明します。

>> 労働市場論(サーチ・モデル)(4)失業率の変遷式