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幾何分布の期待値


幾何分布の期待値を計算しましょう。期待値は、対応する実現値と確率の積の和でした。すなわち

    \begin{eqnarray*}E[X]  = 0(1-q) + 1q(1-q) + 2q^2(1-q) + 3q^3(1-q) + \cdots \end{eqnarray*}


(1-q) でくくれば

    \begin{eqnarray*}E[X]  = (1-q) \{1q + 2q^2 + 3q^3 + \cdots\}\end{eqnarray*}


です。{ } の中は、等差数列 1, 2,3, \cdots と等比数列 q, q^2, q^3, \cdots の積の和となっています。これを計算するための高校数学の常套手段は、まず

    \begin{eqnarray*}S = 1q + 2q^2 + 3q^3 + \cdots\end{eqnarray*}


と表したうえで、この両辺に q をかけたもの

    \begin{eqnarray*}qS = 1q^2 + 2q^3 + \cdots\end{eqnarray*}


を辺々引くというものです。すると

    \begin{eqnarray*}(1-q)S = q + q^2 + q^3 + \cdots\end{eqnarray*}


というふうに、右辺は初項が q等比数列の無限和になるので

    \begin{eqnarray*}(1-q)S &=& \frac{q}{1-q}\end{eqnarray*}


これより、S= q/(1-q)^2 です。よって E[X] = q/(1-q) となります。これで期待値は求まりました (*注1)。


分散の計算は少し複雑なので、補論にしたいと思います。次回は確率のモデル化という話です。

>> 確率分布(離散型)(12)確率のモデル化



注1
教科書によっては p \equiv 1-q と表しているため、期待値の “公式” が (1-p)/p となっていますが、これは単なる表記の違いです。



補論:幾何分布の分散

分散を計算するには \mbox{Var}[X] = E[X^2] - (E[X])^2 の公式を使うべく、X^2 の期待値を求める。すなわち

確率 (1-q)0^2
確率 q(1-q)1^2
確率 q^2(1-q)2^2
確率 q^3(1-q)3^2
   \vdots
確率 q^k(1-q)k^2
   \vdots

という分布の期待値である。これは

    \begin{eqnarray*}E[X^2]  &=& 0^2(1-q) + 1^2q(1-q) + 2^2q^2(1-q) + 3^2q^3(1-q) + \cdots \\&=& (1-q) \{1^2q + 2^2q^2 + 3^2q^3 + \cdots\}\end{eqnarray*}


となるので

    \begin{eqnarray*}T = 1^2q + 2^2q^2 + 3^2q^3 + \cdots\end{eqnarray*}


を求める必要がある。ここから

    \begin{eqnarray*}qT = 1^2q^2 + 2^2q^3 + \cdots\end{eqnarray*}


を辺々引けば

    \begin{eqnarray*}(1-q)T &=& (1^2-0^2)q + (2^2-1^2)q^2 + (3^2- 2^2)q^3 + \cdots\\\\&=& \sum^\infty_{k=1} (k^2-(k-1)^2)q^k\\\\&=& \sum^\infty_{k=1} (2k-1)q^k\\\\&=& 2\sum^\infty_{k=1}kq^k - \sum^\infty_{k=1}q^k\\\\&=& 2S - \frac{q}{1-q}\\\\ &=& \frac{2q}{(1-q)^2} - \frac{q}{1-q}\end{eqnarray*}


よって E[X^2]=(1-q)T=\frac{2q}{(1-q)^2} - \frac{q}{1-q}E[X]=q/(1-q) より

    \begin{eqnarray*}E[X^2] - \left(E[X]\right)^2 = q/(1-q)^2\end{eqnarray*}


となる。(教科書によっては p\equiv 1-q と置き換えることで、幾何分布の分散を (1-p)/p^2 と表している。)