目次へ

>> 101112131415161718

二項分布の派生分布


成功確率 p のベルヌーイ試行を N 回行う状況を考えてください。このとき「成功回数」の確率分布が二項分布でした。今回は、同じ状況下でその他の数に注目してみましょう。


例えば、2人の投資家が共同で5人の借り手に融資する状況を考えてください。5人の借り手はそれぞれ100万円ずつ借り入れます。それぞれの借り手は、確率 p=0.6 で返済し、確率0.4で返済しないとしましょう。5人の借り手がそれぞれ返すかどうかは、お互いに無関係という仮定にします。このとき、単純に「何人返済するか」なら二項分布です。


ここで、お金の方に注意を向けてみましょう。もし全員が返済すれば、返済総額は500万円です。3人だけが返済すれば、返済総額は300万円です。今、2人の投資家AとBが次のような取り決めをしたとします。それは「返済総額のうち、250万円までは投資家Aが優先的に受け取り、投資家Aが250万円を受け取ってもなおお金が残っていれば投資家Bが受け取る」という取り決めです(*注1)。このとき、Aの受け取る金額の分布と、Bが受け取る金額の分布はそれぞれどうなるでしょう。


投資家AとBの受取り額を表にすると以下のようになります。k(成功数)は無事お金を返せた借り手の人数です。




例えば返済できた借り手が2人だけの場合(成功数=2)は投資家Aが200万円を受け取り、Bは何も受け取りません。3人の借り手が返済できた場合(成功数=3)は、投資家Aが250万円を受け取れるので、残りの50万円がBに渡ります。投資家Aの収入の期待値や分散が知りたければ、表を使って地道に求める必要があります。(前回やった二項分布の期待値や分散の公式は使えません。)


さあ、これで二項分布に関するトピックは終わりです。次回から、「離散型」確率分布の3つめ、「幾何分布」を勉強します。

>> 確率分布(離散型)(9)幾何分布(1)


*注1) 投資家Aの方が融資額の負担が多く、支払いの受け取りに関しては優遇されている、という状況です。