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名称


このシリーズでは、行列の基本を学びます。行列の各名称、足し算、かけ算、転置、逆行列などを、経済学に必要な範囲で勉強しましょう。


数学では

    \begin{eqnarray*}\left( \begin{array}{cc}   1& 2     \\   3 & 5.5     \\   4 & 18     \end{array} \right) \end{eqnarray*}



のように、数字を縦横に並べたものを「行列 (matrix)」と言います。横方向を「 (row)」、縦方向を「 (column)」と呼びます。行は「ノートの行」、列は「朝礼の列」と覚えると、縦横が覚えやすいです。上の例は「3行・2列の行列」ですが、短く「3 \times 2の行列」とも言います。これが行列の「サイズ」で、要は行の数と列の数のことです。


行列を構成する1つ1つの数字は「成分 (component)」または「要素 (element)」と呼びます。上の行列では、「2行2列目の成分」は5.5、「3行2列目の成分」は18です。3行2列目の成分という代わりに、第(3,2)成分とも言います。


行列は大文字のアルファベットを用いて表します。たとえば

    \begin{eqnarray*} A= \left( \begin{array}{cc}   1& 2     \\   3 & 5.5     \\   4 & 18     \end{array} \right) \end{eqnarray*}


という具合です。一方、行列の1つ1つの成分は、添え字が2つ付いた小文字で表すことが多いです。たとえば

    \begin{eqnarray*} A= \left( \begin{array}{cc}   a_{1,1}& a_{1,2}     \\   a_{2,1} & a_{2,2}     \\   a_{3,1} & a_{3,2} \end{array} \right) \end{eqnarray*}


などと表します。2つの添え字は順番に、行番号・列番号を表します。a_{i,j}i が行番号、j が列番号です。


1行または1列しかない行列は、「ベクトル (vector)」と呼びます。たとえば

    \begin{eqnarray*} u = (10, 3, -5, 0.2) \end{eqnarray*}


は「行ベクトル」または「横ベクトル」と呼び、

    \begin{eqnarray*} v= \left( \begin{array}{c}  2\\ 5.5\\ 18 \end{array} \right) \end{eqnarray*}


は「列ベクトル」または「縦ベクトル」と呼びます。


最後にスカラーです。行列やベクトルは数字が2つ以上並んだものですが、これに対し1つだけの数字は「スカラー (scaler)」と言います。999はスカラーですし、3.14もスカラーです。


名称は全て頭に入りましたか。行と列のどちらが横でどちらが縦かは、しっかり頭に入れてください。また、行列と言われたら長方形の表、ベクトルと言われたら1行または1列に並んだ数字、スカラーと言われたら1個だけの数字をイメージできるようにしておきましょう。


次回は行列の最も基本的な演算である、行列の足し算とスカラー倍を説明します。

>> 行列の基本(2)行列の和とスカラー倍