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パレート性

3人で一緒にランチに行くのは、何のお店か。学童クラブの子供たちは、みんなで何をして遊ぶのか。カップルは二人で、どんなジャンルの映画を見るのか。


それぞれのメンバーが一貫した選好を持っているとして、グループ全体での選好はどう決めるべきでしょうか。ここまで「コンドルセの方法」「多数の選択肢で一度に多数決」「ボルダ・カウント」という3つの方法を紹介しました。どの方法も、堂々巡りが生じてしまったり、票割れを狙ったダミー候補の擁立を招いてしまったり、自分の選好を偽ることで結果を操作できる可能性があったりと、それぞれに問題がありました。これらの問題を回避する方法として、「固定順序」という決め方があります。


「固定順序」では、初めからグループとしての選好順位を固定しておきます。例えば、「アルファベット順」や「五十音順」です。五十音順に従って、カレーが1番、蕎麦が2番、ラーメンが3番と決めておく。で、カレー屋に行く。「3人にとってカレーとラーメンのどちらがいいか」という問いに対して、投票をしたりしません。「カレーの方が五十音順で先だから、カレー」ということにします。これなら、いちいちメンバーが対立することも、結果が操作されることもありません。


この「固定順序」の最たる例が、王位などの継承を生まれた順にするものです。「長男が次の将軍になる」とルールとして決めておけば、ごたごたが起こりません。


しかし、「固定順序」にも大きな問題があります。それは稀に、メンバー全員がラーメンの方がいいと思っているのに、カレーを食べにいかなければならないとか、全員が次男に将軍になってほしいと思っているのに、長男が将軍になるというようなことが起こりうることです。


正式な言い方をすると、「固定順序」は、「パレート性 (Paretian property)」を満たしません。パレート性とは、任意に2つの選択肢(A,Bとします)を取ってきたとき、「もし全員がAの方がいいと言ったら集団としてもAの方がいい」「もし全員がAとBは無差別だと言ったら、集団としても無差別」という条件です。(Pareto は19世紀イタリアの学者)


例えば、ボルダ・カウントはパレート性を満たす方法です。全員がAよりBの方がいいと思っているとき、全員がBを上位に置くので、合計得点でもBがAに勝ちます。また、全員がAとBを無差別だと思っているならば、全員がAとBに同じ点を付けるので、合計得点でも同じになります。


さあこれで、グループの意思決定のルールはこんな性質を満たして欲しいという3つの基準が出てきました。1つめが、「全域想定のもとでも必ず一貫性のあるグループの選好」になること、2つめが「無関係な選択肢からの独立」、3つめが「パレート性」です。ここまでの内容を定着させるために、練習問題をやってみましょう。

>> 社会選択論(9)練習問題