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生産面GDP,所得面GDP,支出面GDP


今日のポイント
GDPには産出、所得、支出という3つの側面があり、それぞれ推計のしかたが異なる。


GDP(国内総生産)は、その年にその国で作られた全ての財とサービスの価値の合計です。このGDPには、3通りの推計のしかたがあります。1つが生産の局面で調査する方法。残りの2つは、生み出された価値が誰かの所得になったり、実際に使われたりする局面で推計する方法です。


江戸時代の「お米」経済をイメージしてください。作られたお米は、誰かの物になり、やがてそれは消費されたり、翌年のために植えられたり、備蓄されたりしますね。お米の場合、

  1. 生産者たちに何石(ごく)の米を作ったか聞いてまわって合計したものが「生産
  2. 小作や地主など全ての人に何石の収入を得たかを聞いてまわって合計したものが「所得
  3. 人々に何石の米を食べたり、植えたり、蓄えたりしたかを聞いて合計したものが「支出



となります。生産、所得、支出の3つが異なる概念でありながら、量的には近いことが想像できます。まずはお米でいいので、「作られたもの(産出)は誰かのもの(所得)になり、やがてそれは使われる(支出)」というイメージを持ちましょう。



もちろん、実際の経済はお米だけというわけにはいきません。一国のGDPには農産物、工業製品、サービスが含まれ、さらにそれらが全てお金に換算されるので、計算はずっと複雑です。それでもやはりGDPには、生産面、所得面、支出面の3つの推計方法があります。以下ではGDPの3つの側面を、1つずつ見ていきましょう。


生産面GDP
産出の側面から推計したGDPは「生産面GDP」と呼ばれます。農水省に聞けば今年のサンマの水揚げ量も、ミカンの収穫量も分かりますし、国土交通省に聞けば建てられたビルの数も、飛んだ飛行機の便数も分かるでしょう。それらを全てお金に価値換算し、二重計算しないように合算したものが「生産面GDP」です。二重計算を防ぐための理論に関しては、「GDPの付加価値計算」のシリーズでじっくり勉強しました。


所得面GDP
所得の側面から推計したGDPは「所得面GDP」とか「分配面GDP」と呼ばれます。分配と呼ぶ理由は、生み出された価値が、労働者や企業の間で分配された結果が所得だからです。所得面GDPの推計は、税制や会計上のデータを用いることになります。労働者たちが受け取った「雇用者所得」や企業の「営業利益」の合計を求めます。


支出面GDP
支出の側面から推計したGDPは、「支出面GDP」とか「需要面GDP」と呼ばれます。生み出された価値が需要され、使われた時点で計算するのです。支出・需要には消費、投資、政府といったカテゴリーがあることを前回勉強しました。日本では総務省の国勢調査、家計調査、消費実態調査などから消費を推計したり、財務省の企業統計や国交省の住宅統計から投資を推計したりします。


このように、生産、所得、支出は、それぞれ別々の統計データから推計されます。アメリカでは生産面GDPと所得面GDPを推計しています。日本では生産面GDPと支出面GDPを推計しています。


3つのGDPは、推計のしかたは異なっても、数字としてはだいたい同じになるはずだ、という考え方を「三面等価」と言います。それが次回のテーマです。

>> GDPの45度線モデル(4)三面等価

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