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乗数効果

今回のテーマは「乗数効果 (multiplier effect)」です。日常では好循環、悪循環などと呼ばれている現象です。


乗数効果の例は私たちの身の回りにたくさんあります。たとえば、図書室の席が減ったために、席取りをする人があらわれ、さらに席が見つけにくくなり、さらに席取りをする人が増える。農場の労働者が体調を崩し、働ける時間が減ったせいで十分な食べ物を買えなくなり、さらに働けなくなる。ある企業の格付け(信用)が下げられ、そのせいで資金調達が不自由になったせいで本業の利益に悪影響が出て、さらに格下げされて、さらに資金調達が困難になる、等々。


乗数効果は、「1たす1が3になる」という相乗効果とは違うので混同しないようにしましょう。好循環や悪循環によって、当初の影響がぐるぐる巡って増幅するということを意味します。この乗数効果の、マクロ経済学で一番有名な例が、「財政乗数 (fiscal multiplier)」です。これは、政府の財政支出がGDPに与える、理論上の乗数効果です。


政府が20億円かけて表参道に歴代首相の銅像を建てたとしましょう。20億円分のものが作られたわけですから、これは20億円分のGDPになります。ところで、銅像を建てるには、企業や労働者の働きが必要です。企業は利益を得、労働者も収入を得ます。収入を得た人が、一部を新しい車やパソコンの購入に使えば、これもGDPに貢献します。すると車やパソコンの生産に関わった企業や労働者もまた収入を得ますが、その収入の一部を旅行やレストランでの食事に使えば、これもGDPに貢献します。


こうして、所得が新たな消費を生み、それがさらなる所得になるという循環を繰り返せば、最終的にGDPの増加は20億円にとどまらず、30億円にも、50億円にもなるかもしれません。これが財政支出の生み出す乗数効果です。


言葉による説明でも想像はできますが、実際の規模はどれほどでしょうか。最終的なGDPの増加は、当初の財政支出の2倍でしょうか、3倍でしょうか。これを算出するのが「GDPの45度線分析モデル」です。次回からは、いよいよこの45度線モデルの勉強に入ることにしましょう。

>> GDPの45度線モデル(6)モデルの結論を先取り予告