中間財たる小麦と、最終財たるパンの例


以前GDPについて説明しました。GDPはその年その国で生産された全ての財とサービスをお金に換算して合算したもので、日本では省庁や民間の機関の統計をもとに、内閣府が集計します。


1年間にどれくらいの米や麦が作られたかは、農林水産省が調べればある程度分かります。どれくらいの建物が新しく作られたかは、国土交通省が把握しています。そうやって、新しく作られた物を、すべてお金に換算して単純に足し合わせればGDPになりそうです。しかし実際は、単純に足し合わせることはできません。単純に足し合わせると、GDPの過大評価になってしまうのです。


必要なステップの1つが、二重計算を防ぐために、中間投入(原材料など)を差し引く作業です。例えばある年に、小麦の生産が100億円分増え、小麦だけを原料にして作られるパンの生産も400億円分増えたとしましょう。このとき、産出は合計でどれだけ増えたことになるでしょうか。


小麦とパンを合計して100+400=500億円分増えた、とはなりません。パンの価値400億円を作るために、小麦の100億円分を使ってしまっているからです。実際には500億円分の物は生産されていません。

付加価値を計算する

パンの価値400億円のうち、原材料の価値を引いた300億円を、パンの「付加価値」と呼びます。総生産を計算するときは、原材料の価値100億円と、パンの付加価値300億円を足して、合計400億円となります。付加価値だけを考えることにより、小麦を二重計算することを防いでいるのです。


100億円分の小麦を作り、それで400億円分のパンを作った時、もし「合計500億円分のものを作った」と言ったら二重計算になってしまう。こう言われれば、当たり前だと思う人は多いでしょう。ところが、当たり前なこともちょっと言い方が変わるだけで気づきにくくなります。それはこんなふうです。「パンの需要が高まって、400億円分多く売れた。しかし、経済効果は400億円にとどまらない。なぜならパンの生産が増えれば、原料の小麦粉の生産も増えているからである。だから経済効果は450億円にも、500億円にもなる。」こういう言い方をされると、とたんにそんな気がしてきます。


確かに、パンが400億円多く売れれば、その分小麦も多く売れます。パン業界だけでなく、小麦業界で働く人も儲かります。しかし、合計はあくまで400億円で、それ以上ではありません。小麦の価値は、もうパンの価値の中に入ってしまっているからです。


今日の内容のおさらいのため、練習問題をやってみてください。友達がこう言ったとします。「オリンピックを開催すると、スタジアム整備などで1兆3000億円の需要が見込まれる。それで、スタジアムの資材をつくるメーカーの生産も1兆円増えるだろう。合計で2兆3000億円の経済効果が見込まれる。」
この理屈のおかしなところを指摘してください。


二重計算を防ぐために、原材料を引いた「付加価値」だけを足すということ、わかってもらえましたか。次回以降のテーマも同じですが、数学的にもう少しややこしい例を学んでいきたいと思います。

>> GDP算出のための付加価値理論(2)中間財でもあり、最終財でもあるジャガイモの例

珈家(埼玉 越谷)