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>> 1011

タダ乗りゲームの場合2(“3人のうち1人”)


今回はプレーヤーが3人のタダ乗りゲームで、混合戦略均衡を考えましょう。


前回の話を少し変えて、ルームメイトは3人いることにします。3人の名前は、ユーリー、一郎、アフマドです。前回と同様、誰か1人でもストーブを消しに戻れば、全員が恩恵1を得られるとします。1人が行動すれば十分で、2人以上が行動しても、恩恵は変わりません。もし誰も行動しなかった場合には、全員の恩恵が0です。行動した人にはコスト c がかかるとします。


3人とも立場は同じなので、それぞれが同じ確率 p で行動し、1-p で行動しない均衡を求めます。どの2人を選んでも同じなのですが、ここでは一郎とアフマドが採用する確率 p を、ユーリーの無差別性の条件から計算してみましょう。


ユーリーが行動する場合
自分でやるのですから、ユーリーは確実に 1-c の利得を得ます。


ユーリーが行動しない場合
一郎とアフマドのうち少なくとも一方が行動してくれれば、ユーリーは恩恵を受けられます。2人とも行動してくれない確率は (1-p)^2 です。よって、ユーリーは 1 - (1-p)^2 の確率で利得1を得ます。


2つの場合をふまえると、ユーリーの無差別性の条件は 1-c= 1 - (1-p)^2 となります。これは p に関する2次方程式です。解を p^* と表すなら

    \begin{eqnarray*} p^* = 1 - \sqrt{c}  \end{eqnarray*}


です。一郎とアフマドがそれぞれこの確率で行動するというとき、ユーリーにとって行動することとしないことが無差別になります。


別の人の視点に立っても、まったく同じことが言えます。 結果、ユーリー、一郎、アフマドがそれぞれ確率 1 - \sqrt{c} で行動するというのが、このゲームの混合戦略均衡です。 例えば仮にコストが c=0.49 なら p^*= 0.3 となり、この場合3人はそれぞれ30%の確率でストーブを消しに家に戻る、ということになります。


さて、今回は1人でも行動すれば公共財は供給され、みんなが恩恵を受けられるという設定でしたが、公共財の中には、最低2人行動しないと供給されない、というものもあります。次回はその場合を考えてみましょう。

>> 混合戦略(9)タダ乗りゲームの混合戦略均衡3(“3人のうち2人”)

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