なぜランダムに出すのか
3歳のヒロシ君は、じゃんけんで決まってグーを出し、いつも負けてしまいます。一方、6歳のタケシ君は、グー、チョキ、パーを3分の1ずつの確率で出そうと努めます。なぜ成長すると、3つの手を等確率で出すようになるのでしょうか。もちろん、勝つためには違いないのですが、もう少し厳密に考えてみましょう。
誰もが3つの手を等確率で出してくる状況で、あなたもまたそうする理由は、勝率を上げるためではありません。相手が3つの手を等確率で出してくるのならば、グーしか出さないヒロシ君でも勝率は3分の1です。あなたがグー・チョキ・パーを3分の1ずつの確率で出しても、勝率は上がりません。
本当の理由は、「そうしないと、そもそも相手が3つの手を等確率で出してこなくなるから」です。もし、あなたが「絶対にグーは出さない」という人だったら、相手は「3分の1戦略」を捨てて、チョキを出してくることでしょう。
これは混合戦略の理論においてとても難しい、しかしとても重要なポイントです。相手にとって、グー・チョキ・パーの3つが、ちょうど「最良かつ無差別」な選択肢となるためには、あなたが3つを等確率で出す以外に方法はないのです。あなたが、「グー・チョキ・パーを3分の1ずつの確率で出す」のは、グーにするか、チョキにするか、パーにするか、相手に迷ってもらうためなのです。あなたの混合戦略は、実は相手の損得勘定によって決められている、これがとても重要なポイントです。
このポイントに基づいて、いろいろなゲームで混合戦略を探してみましょう。まずは基本4ゲームでも出てきたマッチング・ペニーの例です。
>> 混合戦略(3)マッチング・ペニー1