逸脱
あなたと誰かが、何か大事な物を賭けてジャンケンをするとしましょう。「自分はグー、相手はパー」というのは前回学んだ「戦略プロファイル」の一例です。もしこのとき、時間を巻き戻してくれる妖精が現れて、あなただけ行動を変えても良いと言ったらどうしますか。チョキにしますね。
ゲーム理論では、このように行動を変えることを「逸脱 (deviation)」と言います。「逸脱」の厳密な定義は、「自分はグー、相手はパー」のような戦略プロファイルが1つ与えられたときに、そこから自分だけ行動を変えることです。そして、自分だけ戦略を変えれば利得が上がるプレーヤーは、「逸脱するインセンティブがある」と言います。他のプレーヤーは戦略を変えないと想定しているのが大事なポイントです。
もちろん、現実の世界では、いったん戦略を決めたら変えられないという状況も多いでしょう。ジャンケンがその典型例です。ですから「逸脱するインセンティブがある」と言った場合、それは「もし、他の人の戦略を知ったあとで、自分だけ戦略を考え直せるとしたら」という仮の話であると理解しましょう。
それでは練習問題です。
図の「囚人のジレンマ」において、緑印で示された戦略プロファイルから逸脱するインセンティブを持つプレーヤーは誰でしょうか。
(解答はこちら)
図の「コーディネーション・ゲーム」において、緑印で示された戦略プロファイルから逸脱するインセンティブを持つプレーヤーは誰でしょうか。
(解答はこちら)
図の「マッチング・ペニー」において、緑印で示された戦略プロファイルから逸脱するインセンティブを持つプレーヤーは誰でしょうか。
(解答はこちら)
どうでしたか。次回はこの「逸脱」の概念を踏まえ、ゲーム理論の最も重要な概念の1つである「ナッシュ均衡」を学びます。
>> 最適反応とナッシュ均衡(7)ナッシュ均衡1
Q1解答)
プレーヤー1と2です。プレーヤー1は逸脱して「ぬけがけ」を選ぶインセンティブがあります。(同様にプレーヤー2も逸脱するインセンティブがあります。)
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Q2解答)
プレーヤー1と2の両方です。
プレーヤー1は逸脱して「(協調)しない」を選ぶインセンティブがあります。プレーヤー2は逸脱して「協調する」を選ぶインセンティブがあります。
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Q3解答)
プレーヤー2が逸脱して「うら」を選ぶインセンティブがあります。プレーヤー1は逸脱するインセンティブはありません。
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