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イントロ

マクロ経済学で一番最初に教わるモデルが、GDPの45度線分析モデル(以下、「45度線モデル」)です。45度線モデルは、財政がGDPにどう影響するかを説明してくれます。45度線モデルは公務員試験に出るため知名度が高く、景気対策の議論で多くの人の念頭にあるモデルと言っていいでしょう。


学者はすでに使うのをやめてしまった古いモデルではありますが、45度線モデルが発する主張には面白いものがたくさんあります。例えば、政府が1億円使うだけで、GDPはその何倍も増えるという「乗数効果」。それから、全員が節約したら結局だれの蓄えも増えないという「貯蓄のパラドックス」などです。


45度線モデルを正確に学ぶことは、もっと新しいモデルを勉強するための力にもなります。マクロ経済学が何をどんな方法で分析する学問なのか、具体的なイメージが湧くでしょう。モデルに基づいて批判を展開したり、モデルを改良したりという、「経済学の作法」を体験することができます。


このシリーズは、45度線モデルを、俯瞰的に理解することを目指しています。公務員試験のために勉強するという人も、結局はそれが確実です。以下のロードマップにしたがって、一歩ずつ勉強を進めていきましょう。

予備知識編
45度線モデルはGDPを説明・予測するモデルですが、GDPには3つの側面があります。そこでまず、GDPの1側面である「支出」を学び(第2回)、GDPの3側面を外観し(第3回)、それを踏まえて「三面等価」の考え方を勉強します(第4回)。また、45度線モデルの十八番である「乗数効果」とは何かを学びます(第5回)。ここまでが準備です。


基礎編
そのあとは45度線モデルの内容に入ります。まずは、このモデルの主張を先に「ネタばらし」したあとで(第6回)、モデル式を導き(第7回)、数値例を解き(第8回)、解析解を求めます(第9回)。これらは、このあとの分析の足がかりとなります。


応用編
最終ステージは、45度線モデルの主張、限界、そして改良です。まず、45度線モデルの代表的な主張である、先述の「乗数効果」を再検証し(第10回)、続いて「貯蓄のパラドックス」のトリックを解き明かします(第11回)。そして、45度線モデルに対する様々な批判を見ていきます。


45度線モデルの世界には非現実的な仮定があり、それらは批判の対象になります。たとえば「消費者は将来の増税を心配しない」(第12回)、「需要さえあれば、供給はなんとでもなる」(第13回)、「政府の投資が、民間の投資を圧迫することはない」(第14回)などの仮定がそうです。さらに、45度線モデルは「政府支出の用途の良し悪しを問えない」(第15回)という限界もあります。それらの批判の例を通じ、モデルに基づいて議論するという「経済学の作法」を体験しましょう。


応用編の最後はモデルの改良です。完璧なモデルというものは存在しません。モデルが不十分だと批判されたら、経済学者は全く新しいモデルを作るか、あるいは既にあるモデルを改良しようとします。45度線モデルではどんな改良が可能なのか、いくつかの例を見てみましょう(第17回)。


心の準備はいいですか。それでは、45度線モデルの世界に出発しましょう。

>> GDPの45度線モデル(2)支出

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