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コンソル債の割引現在価値


普通の債券では、やがて満期がおとずれます。ところが満期が永久におとずれない債券も存在します。「コンソル債」と呼ばれる債券です。コンソル債とは、例えば未来永劫、毎年10万円支払われる、というような債券です。18世紀にイギリス政府が発行したコンソル債が有名です。


これからずっと、毎年10万円が支払われる国債が発行されたとしたら、それはいくらでしょうか。これも割引率によって決まります。仮に割引率(金利)が i で一定であるとしましょう。すると1年後の10万円の現在価値は10/(1+i) 万円,2年後の10万円の現在価値は10/(1+i)^2 万円・・・というふうになり、コンソル債の現在価値は

    \begin{eqnarray*}&&\frac{10}{1+i} + \frac{10}{(1+i)^2} + \frac{10}{(1+i)^3} +\cdots  \\\\&=& \frac{10}{i}\end{eqnarray*}


イコールの所には、等比数列の無限和の公式を用いています。


もし金利が1%の世界(i=0.01)であったとすると、このコンソル債の価値は 10/0.01=1,000 万円ということになります。つまり、日本政府が毎年10万円支払うというコンソル債が発行されたとき、これを購入するなら価格は1,000万円です。また、過去に発行したコンソル債を、政府が投資家から買い戻したいと考えたなら、1,000万円払わなければならないでしょう。


永久的に毎年支払われるお金を足し合わせる「割引現在価値」の考え方は、コンソル債の価格以外にも応用できます。例えばあなたが経営する貸し倉庫に、重さ1トンの漬物石を保管してほしいという客がやってきました。保管料は年間10万円で、本来なら毎年末に請求します。ところが、その客は「これから永久に保管してもらうための料金を一括で支払いたい」と言ったとします。この場合、あなたはいくら要求すべきでしょうか。ここでも「割引現在価値」の考え方が応用できます。


類似の例を挙げましょう。ある人がお寺に自分自身のお墓を購入したいと思ったとします。この人が亡くなったあとも、未来永劫残るお墓です。お墓の維持費には、年間10万円かかるとします。このお寺はお墓の値段としていくら受け取るべきでしょうか。


どちらも、「これから毎年ずっと10万円」の現在価値を求める問題です。ストーリーは異なっても、コンソル債の場合と同じ計算式を用いることができます。(金利が i=0.01 ならば1000万円ということになります。)


次回はこの「無期限の場合」で、割賦価値を考えます。

>> 現在価値と割賦価値(5)無期限の割賦