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今日の100万円と5年後の100万円


あなたが仮に米ドルを100ドル、カナダドルを100ドル、香港ドルを100ドル持っていたとしても、合計で300ドル持っているとは言いません。同じドルと呼ばれてはいても価値が異なりますから、単純に足し合わせることはできません。


同じように、あなたが今日100万円受け取り、5年後にまた100万円受け取り、10年後にも100万円受け取ることになっているからと言って、「合計300万円もらう」という言い方をするのは厳密には正しくありません。今すぐもらえるお金と、10年後にもらえるお金では価値が異なりますから、単純に足し合わせられません。


時点の異なるお金を単純に足し合わせるのが、間違いであると簡単に分かる例をあげましょう。日本政府がこれから永久的に、毎年1円くれると約束した証文の価値はいくらでしょうか。この証文が約束するお金の総額は、単純に足し合わせようものなら 1+1+1+\cdots = \infty と、無限大になってしまいます。でも所詮、毎年1円しかもらえないのです。実際にはそんな証券に無限大の価値はありません。1,000円で売られていたとしても、それを買う企業や銀行は皆無でしょう。


経済学では通常、「同じ金額であっても、もらえる時点が遠い未来であるほど、現在から見た価値は小さい」と考えます。1年後にもらえる100万円に比べて、5年後にもらえる100万円の価値は小さいのです。5年後にもらえる100万円はある程度「割り引いて」からでないと、1年後にもらえる100万円と一緒に扱えません。


そこで、次回は将来のお金を「割り引いて」足し合わせる、計算方法を説明します。

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