「労働節約型」の技術
前回はコブ・ダグラス型の生産関数を1つ紹介しました。
が2倍になれば、資本や労働の量が同じでも、2倍の産出が生み出せることが分かります。ですから は「技術水準」や「生産効率性」などを表すパラメータとみなされます。この には、「全要素生産性 (Total Factor Productivity)」という名前がついています。全ての要素、すなわち資本の生産性も労働の生産性も、同じように高めてくれるというニュアンスです。
今日はもう1つのコブ・ダグラス型の生産関数を紹介します。
生産性を表す が、労働の投入量 の前についています。このような は「労働節約技術 (labor-saving technology)」を表したパラメータと言われます。 が倍の大きさなら、労働力 が半分でも済むからです。「労働節約」などと言うと、なんだか人の仕事を奪う技術のように聞こえますが、名前に惑わされてはいけません。「 が大きければ、同じ で今までよりたくさん生産できる」と言い換えることもできるからです。(例えばアメリカのフォードは、ベルトコンベアによる流れ作業を導入し、車を従来よりも少ない人数で生産できるようにしました。では従業員を解雇したかというとそうではなく、今までより多くの車を生産したのです。)
上記の2つの生産関数には、数学的な違いはほとんどありません。後者の生産関数を変形すると ですから、生産性を表す部分が か かの違いはあります。しかし「生産性」はもともと抽象的なものですから、どちらで表しても良いのです。
どちらでも良いのですが、計算結果がきれいになるという理由で、有名な「ソローの経済成長モデル」では後者を使います。あとで出てきますので、今日紹介した2つめのコブ・ダグラス型も頭の片隅に置いておいてください。
これで生産関数の基本的な知識は習得できました。それでは、「経済成長論」の勉強に進むことにしましょう。
>> 経済成長論(序)