配当割引モデル
以前、「将来受け取れる配当の額が、株価にとっては大事だ」という話をしました。今日は一歩進んで、「将来受け取る配当の額から、株価がどう決まるか」を勉強しましょう。それを式で表したものが「配当割引モデル (Dividend Discount Model)」です。
配当割引モデルでは、将来受け取る配当の額は予想できるものとみなします。そこで、今日を時点0とし、1年後、2年後、3年後・・・に受け取る配当の期待値を、とおきましょう。(
は“Dividend” の頭文字です。)
基本的には、株式の価値は、将来受け取る配当全てを合算した価値です。でも、 というように単純に足すことはできません。その理由は2つです。
1つめの理由は、「時間」です。1年後にもらえる1万円に比べたら、5年後にもらえる1万円の方が、待ち時間が長い分だけ価値は低いのです。ですから5年後にもらえる1万円はある程度「割り引いて」からでないと、1年後の1万円と一緒には扱えません。
2つめの理由は「リスク」です。将来の配当はあくまで期待値であって、実際にはそれより大きいことも小さいこともあり得ます。そして投資家は、同じ期待値ならリスクは小さいほどいいと考えます。1年後よりも3年後、3年後よりも5年後の未来の方が、経済や企業を取り巻く環境が不確かなので、(たとえ待ち時間を気にしない投資家であったとしても)5年後に期待される1万円は、1年後に期待される1万円と一緒には扱えません。
以上の理由から、「配当割引モデル」では、将来受け取る配当の期待値を、「割引率」を使って割引いてから足し合わせます。すなわち、割引率を とすると、時点0の理論株価
は次のように表されると考えます。
たとえば割引率が7%であれば、




ここで、配当が一定率







です。(2つめのイコールには「等比数列の無限和」が使われています。)株価は、現在の配当、配当成長率、割引率の3つで決まることが分かります。これが配当割引モデルです。
この配当割引モデルを応用して、株式投資の基本用語である「バリュー株」と「グロース株」についての理解を深めたいと思います。その準備として、次回はバリュー株とグロース株とは何かを説明します。
>> 配当割引モデル(6)バリュー株・グロース株1