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配当のタイミング

「株の価値」は「配当」にあるというのが前回の話でした。では、現在配当をたくさん払っている企業の株価が高いのでしょうか。必ずしもそうではありません。今すぐ配当をもらえなくても、将来的にたくさん配当をもらえそうなら株価は高くなります。企業の経営者は、長い目で見て多くの配当が支払えるように、配当を支払うタイミングを選ぶのです。


たとえば、毎年同じようにコーヒーを販売することで、毎年100万円の利益を上げられる企業があるとしましょう。毎年100万円の配当を株主に支払うことが可能です。


一方で、今年その100万円で新しいコーヒーマシーンを購入することで、来年から毎年130万円の利益が得られるという可能性もあります。株主はたとえ今年は配当がゼロでも、来年から毎年130万円を受け取る方がいいと思うかもしれません。


経営者は、新しいビジネスのアイディア(投資機会)があるならば、その実現のためにお金を使います。マイクロソフト社は当初は配当をほとんど払わず、利益の全てを新たなアイディアの実現のために投資していたといいます。将来もらえる配当の量が多いほど、現在の株価は上がります。今すぐ現金が必要な株主は、保有している株の一部を売却すればいいのです。


逆に、良い投資機会のない企業は、利益の多くを配当として株主に支払います。ロングセラーの商品をたくさん持っている食品メーカーで、特に新しい設備も必要がないという会社であれば、毎年の利益をほとんどそのまま配当にしてしまうでしょう。お金があるからといって、必要もない工場を建てたら無駄です。


ここまで、

  1. 株式を買うと、企業のオーナーになれる
  2. 企業のオーナーになると、企業の配当が自分のものになる
  3. 株価にとっては、現在だけでなく将来受け取れる配当の量も大事である


ということを説明しました。次回は、株価の変化について考えたいと思います。

>> 配当割引モデル(4)株価の長期的な傾向と「配当落ち」