標準偏差
ばらつきやリスクの指標としての「分散」の欠点は、数値の意味を直観的に理解できないことです。「期待値が66万円」と言われたら期待値が大きいのか小さいのか判断できますが、 「分散が6.24 (JMY)」と言われても具体的なイメージに乏しく、結局のところばらつきは大きいのか小さいのか、よく分かりません。
原因は、分散の計算過程で数字を2乗した際に、単位も2乗になってしまったことです。もともとの単位が円、ドル、%、メートル、グラム、年、月、週なら、分散の単位はその2乗なので、機械的に円、ドル、%、メートル、グラム、年、月、週となります。これらの単位には何の直観的意味もありません。
そんなわけで、分散も確かに「ばらつき・リスク」の指標にはなるのですが、実際の指標としては「標準偏差」を使います。標準偏差の計算法は簡単で、分散の平方根を取るだけです。標準偏差 (standard deviation) は、頭文字sのギリシア文字版である (シグマ)を使って表します。
ステップ7
ビールの売上げとアイスクリームの売上げの標準偏差をそれぞれ求めましょう。単位も一緒に平方根を取ってください。ビールの売上げの標準偏差は
アイスクリームの売上げの標準偏差は
です。平方根を取ったことで、単位が元の「十万円」に戻ります。ビールの売上げの標準偏差は25万円、アイスクリームの方は15.6万円です。
こちらの数字は、ある程度直観的に理解できます。ビールの売上げもアイスクリームの売上げも、平均は66万円なのですが、実際にはそれよりも高かったり低かったりして、平均からズレます。ズレは大きいときもあれば、小さいときもあります。標準偏差はいわばこの「平均からのズレ」の平均です。標準偏差が小さい確率変数であるほど、「だいたいいつも平均くらいなんだな」と安心できます。これが標準偏差の具体的なイメージです。
分散の計算手順と標準偏差の具体的なイメージは、暗記した方が統計学やファイナンスの勉強が楽になるので、できるだけ覚えてください。次回は、2つの確率変数のあいだの共分散と相関係数です。
>> 確率変数の「平・分・共・標・相」(5)共分散と相関係数