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ドーマー・モデル1 数式編


今回は、経済成長理論のドーマー・モデル(Harrod-Domar model)を紹介します。1946年の彼の論文は微分方程式を使って難しく書かれていますが、核となるアイディアは単純です。式も4本しか出てきません。


まず、t 期の産出の量 Y_t は、その期の設備資本の量 K_t に比例すると仮定します。

    \begin{eqnarray*}Y_t = AK_t\end{eqnarray*}


A は比例定数です。これは、資本のみをインプットとする生産関数です。労働を重視しなかったのは、大恐慌で溢れる失業者を目の当たりにしたドーマーならではのことでしょう。


次に、生産されたものは、消費または投資に使われます。貯蓄率s(ただし 0<s<1)とおくと、消費 C_t と投資 I_t

    \begin{eqnarray*}C_t &=& (1-s) Y_t\\I_t &=& sY_t\end{eqnarray*}


です。例えば s=0.5 なら、その国の人々が所得の半分を消費し、残り半分を将来のために投資することを意味します。


最後の式は「資本蓄積式」です。投資は次の期の資本になります。\delta は資本減耗率です。

    \begin{eqnarray*}K_{t+1} = I_t +(1-\delta)K_t\end{eqnarray*}



これで式は全てです。ドーマー・モデルは式が単純なので、マルサス・モデルで行ったようなエクセルによるシミュレーションは必要ありません。数式を変形するだけで何が起こるか予測することができます。そこで次回は、ドーマー・モデルが示唆する経済成長率を計算してみましょう。

>> 経済成長論(7)ドーマー・モデル2 インプリケーション編