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資本の蓄積


マルサス・モデルには登場しませんでしたが、経済成長のためには「資本の蓄積」が必要です。資本の蓄積をどう数式で表すかを勉強します。


まず、「資本」とは何でしょうか。漠然と用いられる言葉ですが、ドーマーやソローの経済成長理論における意味は限定されています。資本とは、「生産に利用される設備」のことです。具体的には、ビルや工場、車、機械、コンピューターシステムやネットワークなどを指します。こうしたものを増やす行為を「投資」と呼び、これらが古くなったり壊れたりすることを「減耗」と呼びます。資本の蓄積を式で表すときには、投資と減耗の両方を考慮する必要があります。


時点 t におけるある国の資本の総量を、K_t と表すことにしましょう。次の期の資本の量 K_{t+1} は以下の式で決まります。

    \begin{eqnarray*}K_{t+1} = I_t + (1-\delta)K_t\end{eqnarray*}


I_t は投資、つまり今期新たに作られた建物や機械などの量です。右辺第2項は、今ある資本の来期への持ち越しです。\delta は「減耗率 (depreciation rate)」と呼ばれ、0と1の間の値をとります。例えば \delta= 0.1 であれば、毎期10%が減耗して消え、残りの90%が持ち越されることになります。来期の資本の量は、今期からの持ち越し分と新規の投資の合計というわけです。この式は「資本蓄積式 (capital accumulation equation)」と呼ばれます。


ドーマー・モデルやソロー・モデルの差分方程式には、この資本蓄積式が加わりますので、見なくても書けるくらいに慣れてください。次回は、資本の蓄積が「貯蓄」と結びついていることを説明します。

>> 経済成長論(5)貯蓄率