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マルサス・モデル1 概要編

経済成長論の入門で最初に学ぶのはマルサス・モデルです。今回はマルサス・モデルの概要を説明し、次回数式を用いて正式に説明します。


マルサス・モデルに出てくる生産活動は「農業」です。投入される生産要素は「土地」と「労働」で、トラクターなどの「資本」は登場しません。土地と働き手が多いほど、たくさん生産できるという生産関数を仮定します。


「資本」が無いので「投資」もありません。生産された物は投資に使われることなく、全て消費されます。消費全体を人口で割った「一人当たりの消費」が、その国の「生活水準」を表します。そして、生活水準が高ければ人口は増えるし、低ければ減ると仮定します。生活水準が人口の増え方に影響を与えるというこの仮定が、マルサス・モデルの大きな特徴です。


ここまで、マルサス・モデルの仮定をまとめると

  1. 生産に必要なものは、土地と労働である。
  2. 生産されたものは、全て消費される。
  3. 一人当たりの消費は生活水準を表し、これが高いほど人口の増加率が大きくなる。


この仮定をもとに、4本の漸化式が導かれます。漸化式を使ったシミュレーションでは、初期の労働人口を設定します。すると労働人口と土地の量でその期の生産が決まり、生産は消費となり、一人当たりの消費は生活水準となって次の期の労働人口を決めます。こうして生産、消費、労働人口が変化していくさまをシミュレートすることができます。


マルサス・モデルのシミュレーションが示す結果は主に2つです。第1に、マルサスの世界では、たとえ農地が増加したとしても、人々の生活水準は向上しません。第2に、たとえ生産性の高い品種が生み出されたとしても、やはり生活水準は向上しません。なぜでしょうか。その理由を説明する前に、次回はマルサス・モデルの漸化式を導きます。

>>  経済成長論(2)マルサス・モデル2 数式編