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割賦価値


複数年にわたって受け取るお金の合計価値を求めるのが「割引現在価値」の計算です。今日のテーマはこれとは逆の「割賦価値 (annuity value)」の計算です。


例えば退職金や宝くじの当選金などを想像してください。今すぐ一括で1000万円受け取ってもいいが、「◯年間、毎年同額ずつ受け取れる」という選択肢もあったとします。例えば1000万円を来年から毎年 D 円、20年間に渡って受け取れるといった具合です。このとき、D 円はいくらが妥当でしょうか。


「1000万円を20年で割るんだから50万円でしょ?」と言う人は損することになります。20年後の50万円の現在価値は、50万円よりも安いからです。前回出てきた式をもう一度見てみましょう。

    \begin{eqnarray*}S &=&  \frac{D}{1+i} + \frac{D}{(1+i)^2} + \frac{D}{(1+i)^3} +\cdots + \frac{D}{(1+i)^n} \\\\&=& \left\{1-\left(\frac{1}{1+i}\right)^n \right\}\cdot \frac{D}{i}\end{eqnarray*}


「20年間に渡って毎年 D 円受け取ること」の現在価値が1000万円に一致するためには、D の値はいくつでなければならないでしょう。


これを求めるためには、公式を逆に使います。金利は1%だとして、i=0.01 を割引率に用いましょう。いますぐ一括で1000万円受け取ることの現在価値は1000万円ですから、S=1000万円です。20年に渡って受け取るので、n=20 です。i=0.01n=20S=1000万円を式に代入すれば、D=55.4万円が出てきます。今1000万円受け取ることは、今後20年に渡って毎年55.4万円受け取ることと同等だということになります。この55.4万円が、1000万円の(20年で割った場合の)割賦価値です。


これは借金の支払いでも同じです。今日一括で返せば1000万円で済む返済を、年1回の20回払いにするとしたら、1回あたり 1000/20=50万円ずつ、というわけにはいきません。毎回55.4万円支払うことになります。(実際の支払い額は i の値に依ります。)


ここまで、将来n回の支払いが起こるような証券を考えてきました。次回からは、「永久的に」支払いが起こる場合を考えます。

>> 現在価値と割賦価値(4)コンソル債の割引現在価値