ドーマー・モデル3 歴史編
経済成長とは、一人あたりの所得(個人でいう年収)が増えていくことです。どのようにすれば経済は成長するのでしょう。ドーマー・モデルの主張は極めて明快です。貯蓄・投資を増やせばいいのです。今は消費を我慢して、所得の2割、3割、あるいは5割を投資していれば、その国の経済は成長するというのがドーマー・モデルの主張です。
このモデルは、もともとはアメリカ経済を説明するために作られましたが、開発経済学者たちによって途上国に応用されました。貯蓄・投資をすることで、途上国も豊かになれるはずだと考えたのです。
ただ、貧しい国の人々は日々の生活で精一杯で、なかなか貯蓄・投資まで手が回りません。解決策として考えられたのが、西側諸国による援助でした。いずれ自力で貯蓄・投資できるようになるまでの「一時的な」手助けとして、1950年代から80年代にかけ、IMFや世界銀行を通じて、アジア・アフリカ諸国に莫大な援助が行われました。けれども、それはうまくいきませんでした。この間、アジアの一部の地域(台湾、韓国、香港、シンガポール)を除いて、ほとんどの地域は成長を遂げることなく、40年間ずっと貧しいままでした。
なぜでしょうか。人々はみな、豊かになりたいと思っています。今は貧しくても、一生懸命働くことによって、自転車を買い、マイカーを買い、子供を学校に行かせられるのであれば、多少の努力は厭わないでしょう。そこに海外からの援助で工場が建ったり道路が舗装されたりするのですから、10年もあれば少しは状況が改善しそうなものです。いったい何がいけなかったのでしょうか。
その問題点に、現場の経済学者たちが気づいたのはずっと後になってからですが、理論家たちの方は「経済成長は設備投資では達成できない」ということに薄々気づいていました。そのきっかけとなったのが、1957年に発表されたソローの経済成長理論です。
次回から、そのソロー・モデルを勉強したいと思います。
>> 経済成長論(9)ソロー・モデル1(モデル編)