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対数目盛りのグラフ2

かけ算的に増えていく変数の推移をグラフ化するときは、たて軸に「対数目盛り」を使うことを検討してください。その重要性を理解するため、今日は別の例を紹介します。


次の図は、1960年代から2000年代にかけての、コーヒー1杯とうどん1杯の値段の推移を表したものです。横軸に時間、たて軸に価格を取っています。




この図の問題点に気づくためには、うどん1杯の値段の変化が、最初の10年間(1962-1971年)と最後の10年間(2001-2010年)でどちらが激しかったかを考えればいいでしょう。上の図を見ていると、最初の10年では半目盛り、最後の10年では1目盛り以上上昇しています。すなわち、後者の方が上昇が大きく見えます。


しかし、よく考えれば最初の10年の方が急激な値上がりであることが分かります。50円以下だった物が、倍になっているので、100%の値上がりです。一方、最後の10年は480円くらいから600円ですから、25%の値上がりです。価格の水準は時代によって異なり、同じ「1円」の重みも変わります。価格変化にとって大事なのは何円上がったかではなく、何%上がったかなのです。上のグラフでは、それがうまく表されていません。


そこで、前回の例と同じように、対数目盛りを採用します。30円を出発点に、倍になるごとに1目盛りずつ上がっていくようにしてみましょう。たて軸が30, 60, 120, … と変わったことに注目してください。




60年代、70年代の急激な価格上昇が、傾きの急なグラフとして表現されました。これなら現実と見た目が整合的です。


最後に1つ練習問題をやってみましょう。以下のグラフはアメリカの株価指数S&P500の歴史的な推移を表しています。世界恐慌(1929年)のときと、ドットコム・バブルの崩壊(2001年)とで、どちらの方が大きな暴落だったか分かりますか。(解答は下記を参照)




「かけ算的に変化する変数」の変化の特徴が分かったでしょうか。次のシリーズでは、かけ算的に変化する変数に関する、弾力性の概念を理解し、計算できるようにすることが目標です。(終わり)



問題の答え
単純な下げ幅で見ると2001年の方が大きいのですが、割合で見ると1929年の方が深刻です。世界恐慌のときは、株の価値は半分以下になっています。2001年の方は半減とまでは行っていません。株価で大事なのは比率の方ですから、ここでも対数目盛りを使用するのが適切と考えられます。