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期待リターン


前に証券の「リターン(収益率)」とは何かを勉強しました。復習すると、「時点 t 現在」から「時点 t+1」までの1期間のリターンは

    \begin{eqnarray*} R_{t+1} = \frac{P_{t+1} + D_{t+1}}{P_t} -1 \end{eqnarray*}


と定義されました。 R がリターン (Return)、P が価格 (Price)、D が配当 (Dividend)です。今回のテーマは、このリターンと似て非なる「期待リターン」です。


リターンがいくつになるかは、t 時点ではまだ分かりません。分母の P_tt 時点現在の価格なので既知ですが、分子の P_{t+1}D_{t+1} は将来の値であり、未知だからです。株価は上がるかも知れないし、下がるかも知れない。配当は多い年もあれば少ない年もあります。すなわち、リターンは確率変数なのです。


確率変数がいくつと出るか(これを確率変数の「実現値」と言います)は事前には分かりませんが、期待値は事前に推定することができます。おおざっぱなイメージで言えば、期待値は「運が良くも悪くもないときの、平均的な値」を表します。デパートの来客数や、来年のインフレ率を予測する場合も、要は期待値を推定しているわけです。


さて、「期待リターン (Expected return)」ですが、これはリターンの期待値のことです。ファイナンスでよく使う言葉なので覚えておきましょう。よく使うので「期待」を省略して言ってしまうことすらあります。たとえば、「ハイ・リスク,ハイ・リターン」という言葉がありますが、この場合の「リターン」はあくまで「期待リターン」のことです。実際に実現するリターンが低く、損をすることも十分あり得ます。「リターンが高い投資」と言った場合のリターンは、「期待リターン」の意味であると理解しましょう。

>> マーコウィッツの平均分散分析(序)