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統計学の哲学

「コインを投げて、おもてが出たら1万円貰え、裏なら何も貰えない」
というゲームの賞金の分布は

確率0.5で1 (万円)
確率0.5で0 (万円)

です。「サイコロを振って、出た目の数だけ1万円札をもらえる」というゲームの場合は、賞金の分布は

確率1/6で1
確率1/6で2
確率1/6で3
確率1/6で4
確率1/6で5
確率1/6で6

です。ゲームの賞金のように、ふたを開けてみないと値がいくつになるか分からない変数のことを「確率変数(かくりつへんすう)」といい、起こり得る値とその確率を、ペアにして全部並べたものを「確率分布(かくりつぶんぷ)」と言います。コインやサイコロを使ったゲームの賞金であれば、確率分布が上記のようになることは明らかでしょう。


パチンコ屋さんにあるパチンコ台やスロットマシーンが、どれくらい当たるかの確率分布はどうでしょうか。こちらは誰の目にも明らかという訳にはいきません。大当たりがどれくらいの確率で出て、小さな当たりはどれくらいの確率で出るのか、よほどの常連でない限り検討がつきません。その一方で確率を正確に知っている人もいます。そのマシンを設計した人たちです。


世の中にはさらに色々な確率変数があります。明日の最高気温や月末の株価、あなたのお店に今日ランチを食べにくるお客さんの数もです。これらの確率変数では、パチンコ台を設計した人のように、正確に確率分布を知っている人はいません。せいぜい今までの経験から、「晴れた日のランチ客は15〜20人である確率が90%」のように、だいたいの確率を推定するのがせいいっぱいです。


でも、知っている人がいようがいまいが、「真の確率分布はちゃんと存在している」と統計学者は考えます。これが統計学の哲学です。天気を司る天使が、ビンゴゲームの抽選のように、大きな袋の中から明日の最高気温を引いてくるところを想像してください。どんな気温がどれくらいの割合で袋に入っているかが「確率分布」です。天使は袋の中を知っていますが、人間はこれまでの経験からだいたいの確率分布を想像するしかありません。それでも、真の確率分布は存在する、と統計学者は考えるのです。(注:統計学者が天使を信じているというわけではありません。)


統計学は数学をたくさん使うため、数学の一分野だと思っている人もいます。でも、この「真の確率分布が存在するはず」というところは数学には無い、統計学ならではの信念です。この統計学の信念と、数学との橋渡しとなるのが、「大数の法則(たいすうのほうそく)」という数学の定理です。次回はこの「大数の法則」についてお話ししたいと思います。

>> 確率統計の入り口(2)大数の法則

千葉県南流山 カフェ・メルシー