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最終利回りの定義


今日のポイント
ある債券の「最終利回り」とは、その債券の全てのキャッシュフローを割り引くことでその価格を求めることができるような「割引率」である。




前回は、「金利が1、2、3年物の順に3%、4%、6%」という設定で、これを割引率として債券の価格を求める練習を、3つの例でやってみました。この割引き計算が理解できれば、「最終利回り」をスムーズに理解できると思います。前回と同じ3つの債券を例に考えましょう。それぞれの債券のキャッシュフローと価格をまとめると

  • 債券A:「1年後に2000円、2年後に2000円、3年後に12000円」もらえる。価格は13,866円
  • 債券B:「1年後に5000円、2年後に5000円、3年後に5000円」もらえる。価格は14,053円
  • 債券C:「1年後に1000円、2年後に11000円」もらえる。価格は11,141円



でした。今日のテーマは以下のような問いです。債券Aの価格を13,866円にするような「一定の割引率」はいくつか。式でいうならば

    \begin{eqnarray*}\frac{2000}{(1+x)}  + \frac{2000}{(1+x)^2}  + \frac{12,000}{(1+x)^3} = 13,866\end{eqnarray*}



を満たすようなxはいくつだろうか?という問いです。


上記の方程式の解は、必ず1個だけ存在します。なぜなら、左辺はxがゼロのときに16000円で最大となり、xが大きくなるにつれてゼロに近づいていくからです。よって、左辺がちょうど右辺に等しくなるような正の実数xが、1個だけ存在することになります。


xを見つけるには、3次方程式を解けばいいのですが、ここでは「ソルバー」という方法を紹介しましょう。xに0.05とか、0.055とか、いろいろな値を代入してみて、左辺がちょうど右辺に等しくなるようなxを探す、という方法です。この方法でエクセルに計算させると、xは0.0563、すなわち5.63%とわかります。この値を、債券Aの「最終利回り (Yield to maturity)」と言います。これが冒頭の「今日のポイント」に出てくる定義の意味です。将来のキャッシュフローを全てこのxで割り引いて足せば、現在の価格に等しくなるよ、というxのことなのです。


練習のため、債券Bの最終利回りも求めてみましょう。債券Bは3年間毎年5000円もらえる債券で、価格は14,053円ということなので、

    \begin{eqnarray*}\frac{5000}{(1+x)}  + \frac{5000}{(1+x)^2}  + \frac{5000}{(1+x)^3} = 14,053\end{eqnarray*}



を満たすxを求めればいいことになります。これもxにいろいろな値を入れて解を探します。するとx=0.0333、つまり3.33%が最終利回りだと分かります。


最後に債券Cの最終利回りです。債券Cは1年後に1000円、2年後に11,000円もらえる債券で、価格は11,141円ということなので、

    \begin{eqnarray*}\frac{1000}{(1+x)}  + \frac{11000}{(1+x)^2} = 11,141\end{eqnarray*}



を満たすxを求めればいいことになります。こちらは2次方程式なので、解の公式を使った手計算で求められる人もいるでしょう。その場合は、(1+x)を別の変数に置き換えると楽に計算できます。解はx=0.0395, すなわち3.95%となります。


債券の最終利回りの定義は理解できましたか。次回は一般的な表記を使って最終利回りを定義します。

>> 最終利回り(3)一般的な定義