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「¥1,000貸したら、1ヶ月後に¥1,100返してもらう」という方針の金貸しがいたとします。前回説明したように、この場合の利子率(金利)はひと月10%, 年率では120%だと言います。

今、少し話を変えて、この金貸しが同じ利子率で「借り換え(refinancing)」に応じることにしましょう。

例えば12月末に¥1,000借りたとして、1月末に¥1,100返すところを、2月末に返してもよいということです。この場合、2月末での返済額は¥1,100にさらに10%の利息がついて、


    \begin{eqnarray*}\yen1,000 (1 + 0.10)(1 + 0.10) = \yen1,210\end{eqnarray*}

となり、利子は¥210となります。

2月末に返済せず、3月末まで先延ばしすると、返済額は


    \begin{eqnarray*}\yen1,000 (1 + 0.10)(1 + 0.10)(1 + 0.10) = \yen1,331 \end{eqnarray*}

となり、利子は¥331です。

借りてから1年後まで返さないと、返済額は

    \begin{eqnarray*} \yen1,000 \underbrace{(1 + 0.10)\cdots (1+0.10)}_{12\; \mbox{times}} = \yen3,138 \end{eqnarray*}

まで膨れ上がってしまいます。もともと借りた元本が¥1,000なので、差額¥2,138が利子(元本の213%)です。

毎月利子だけでも返していればここまでの額にならないのですが、そうでないと「利子が利子を生む」ことから、返済額が大きくなるのです。

先に、「¥1,000借りて、1ヶ月後¥1,100返す」ときの金利はひと月10%だから、単純に12倍して年率120%と表示される、と説明しました。ところが実際はそれで1年間借りると、1年後に支払う利子は元本の120% (¥1,200) ではすまず、元本の214% (¥2,138)となるのです。

利子率が低ければギャップは小さい

この、表示されている「利子率」と「実際に支払う利子」との間のギャップが、ここの例では極端に大きくなっていて一瞬詐欺のように思えるかもしれませんが、これは利子率が極端に高いせいです。

もう少し現実的な利子率にして、「¥1,000借りて1ヶ月後に¥1,020返す」だと利子率はひと月2%、年率24%です。文字通り(見た目)だと利子は¥240、一方「利子が利子を生む」ことを考慮して計算すると1年後の返済額は


    \begin{eqnarray*} \yen1,000 \underbrace{(1 + 0.02)\cdots (1+0.02)}_{12\;\mbox{times}} = \yen1,268 \end{eqnarray*}

となるので、利子は¥268です。ギャップはずっと小さいですね。小さいとは言え、ギャップは生じます。このギャップをいつでもきちんと計算できるようになるためには「複利計算」について学ぶ必要があります。そこで次回は、この複利計算を理論的に理解することにしましょう。

>> 複利計算(1)複利とは