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イールド・カーブから債券価格を計算する


経済学では、1年後にもらえる1000円は、今すぐもらえる1000円とは別物と考えます。1年後にもらえる1000円と、3年後にもらえる1000円も別物です。時点の違うお金どうしの、いわば交換レートが金利なのです。


前回までは、それぞれの年限の金利(金利の期間構造・イールドカーブ)を、それぞれの年限の割引債の価格から求めました。今回は逆に、金利から債券の価格を求めます。


たとえば、1年物の金利が3%, 2年物の金利が3.5%, 3年物の金利が3.25%だとします。このとき、以下の4つの債券の理論価格を求めてみましょう。

(i) 1年後に1,000円支払う割引債
(ii) 2年後に1,000円支払う割引債
(iii) 3年後に11,000円支払う割引債
(iv) 1年後と2年後に1,000円ずつと、3年後に11,000円という、計3回の支払いがある債券


このうち問(i)-(iii)は単純で、満期での支払額(ペイオフとも言います)を「1+金利」で割るだけです。ただし、金利は年率で表されているので、2年であれば2乗、3年であれば3乗したもので割ります。したがって(i)-(iii)の答えは順に

    \begin{eqnarray*}\frac{\yen1000}{(1+0.03)} = \yen970.87\end{eqnarray*}



    \begin{eqnarray*}\frac{\yen1000}{(1+0.035)^2} = \yen933.51\end{eqnarray*}



    \begin{eqnarray*}\frac{\yen11000}{(1+0.0325)^3} = \yen9993.61\end{eqnarray*}


です。このように、「将来のペイオフを金利などで割ることで現在の価格に直す計算」を、経済学やファイナンス理論では「割引き現在価値を求める」、あるいは単に「割引く」と言います。例えば、1年後の1000円を、金利3%で「割引く」と、現在の価値970.87円が求まるし、3年後の11000円を、3.25%の金利で「割引く」と、現在の価値9993.61円になる、といった具合です。1年後の支払額は1年物の金利で、3年後の支払額は3年物の金利で割引くことに注意してください。


問(iv)はオマケです。(iv)の支払いは、単に(i)-(iii)をくっつけただけなので、理論価格も単に(i)+(ii)+(iii)になります。

    \begin{eqnarray*}\frac{\yen1000}{(1+0.03)}  + \frac{\yen1000}{(1+0.035)^2}  + \frac{\yen11,000}{(1+0.0325)^3} = \yen11,898\end{eqnarray*}


ポイントは、n年後の支払額を現在に割引くために用いる「割引率」となるのは、n年物の金利だということです。最後の問題のように、将来の複数の時点で支払が発生するような債券の場合、それぞれの時点の支払に別個の割引率を適用することになります。


さて、実はこの最後の債券は、「クーポン債(利付債)」と呼ばれる債券の一例です。世の中で取引されている債券の多くは、「5年後に100万円払います」というだけでなく、定期的にクーポンを支払います。次回から、このクーポン債の理論を勉強しましょう。債券先渡しや先物金利を勉強したい人はそちらに進んでください。

>> クーポン債の理論(1)クーポン債とは