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経済成長

前回出てきた赤い線と青い線の図をもう一度見てください。前回は波打った赤線、すなわち景気循環の話をしました。今回は青い点線、すなわち長期的なトレンドの方に話を移しましょう。このGDPの上昇トレンドが、「経済成長」と呼ばれる現象です。


現代人は、経済成長によって生活が少しずつ豊かになっていくことに慣れていますが、昔からずっとそうだったわけではありません。トマ・ピケティは『21世紀の資本』の中で、人類史の各時代に、一人当たりの産出がどれだけ増えてきたかを紹介しています。それによれば、ヨーロッパの一人当たりの産出は、


西暦0-1700年:成長せず
1700-1820年:年率0.1%で成長(およそ693年で2倍になるペース)
1820-1913年:年率1%で成長(およそ70年で2倍になるペース)
1913-2012年:年率1.9%で成長(およそ37年で2倍になるペース)


となっています。戦後の日本には「10年で所得を倍にする」という所得倍増計画というのがありましたが、これの実現には、一人当たりのGDPが毎年7%増えていくことが必要でした。現代の成熟した経済ではさすがに7%はあり得ませんが、それでも政治的に安定した国では緩やかに経済が成長していきます。親は「いまの子供たちは恵まれている」と言い、言われた子供たちも親になれば、「最近の子供は贅沢だ」と言う。それが何世代も続くのが正常な国の経済です。


ためしに、1994年から2014年の日本の一人当たりGDPのデータを見てみましょう。次のグラフを見てください。



ここでは深入りはしませんが、グラフ中の「実質」というのは、物価変動の影響をきちんと考慮しているという意味です。たとえ収入が額のうえで倍になっても、物の値段も倍になったのだとしたら、実質的な収入は変わっていません。そこで、「実質GDP」は見た目の金額ではなく、実際にどれだけの物が生産され、使用されたかで考えるのです。また、「2011年基準」とは、2011年の人たちの貨幣価値で表した数字だということです。「連鎖方式」に関しては、ここでは説明しません。


1994年には340万円だったのが、2014年には400万円ですから、一人当たりのGDPは2割近く上がっています。本当に人々は、20年前よりも2割も多くの物を生産し、消費しているのでしょうか。「自分はそうだ!」という人は多いかもしれませんが、年齢とともに収入が増える人もいるので、個人的な経験はそこまで当てになりません。ここは一国全体のことなので、たとえば1994年の30歳の人たちと、2014年の30歳の人たちを比べる方が近いです。


たとえば、かつては一家に1つあるか無いかだったのが、2014年には一人一台になったものがあります。また、宅配サービス、長距離電話、カラー印刷、写真、音楽、映画、ゲーム、書籍や教材、ニュースや地図や料理レシピなどの情報は、2割どころではなく何倍も楽しんでいます、という人もいるでしょう。


「それは経済成長というより、むしろテクノロジーの進歩のおかげではないか」と感じたとしたら、それは正しい直感です。初期の経済成長だけなら、単に工場や機械の「量」を増加させるだけでも達成できますが、先進国が遂げたような100年、200年にわたる長い成長には、「質」の増加、つまりテクノロジーの進歩が不可欠と考えられています。


さて、ここまで消費、投資、貯蓄、産出など、さまざまな概念を学んできました。これらの経済学の概念に限らず、価格、気温、身長、人口などのように、数字で表せる概念を「変数」といいます。次回はマクロ経済学に出てくるさまざまな変数を、2種類に分類する考え方を学ぶことにします。


今日のポイント:
長い目で見た経済成長は、主にテクノロージの進歩によって達成される。

>> マクロ経済学の基本用語シリーズ(10)ストック変数とフロー変数



本文で引用された本: