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ストック変数とフロー変数

マクロ経済学には、人口、生産、消費など、さまざまな変数が登場しますが、それらはすべて、「ストック変数」か「フロー変数」のどちらかに分類されます。今日の目標はその区別を習得することです。


大きなプールに水が溜まっているところを想像してください。プールに貯まった水の量が「ストック」のイメージです。一方、蛇口から新たに注がれる水や、出口から排出される水の量が「フロー」のイメージです。入ってくる分と出ていく分を区別する場合は、インフロー、アウトフローと呼びます。

人間の体で言えば、体重がストック、食べ過ぎやダイエットによる増加や減少がフローです。人口がストックならば、出生・死亡・移住する人の数がフローです。会社の従業員数がストックならば、フローは新規採用数や離職者数です。


もう少し経済的な例もあげましょう。あなたの銀行の預金残高はストック、日々の預入れや引出しの額がフローです。「あの人はお金持ちだ」というときも、2つの意味があります。ストックが多い人は、もう引退して収入は少ないかもしれないけど、すでに広い土地やお屋敷やたくさんの預金を持っている人です。一方、フローが多い人は、まだ若くて貯えは少ないかもしれないが、毎年の収入が多い人です。


国の借金を心配する場合も、「国債の発行残高」が大きいことを心配する人はストックの方を見ています。逆に、「今年も財政赤字だった」ことを心配する人は、フローの方を見ています。赤字が続いていても、借金の残高がそんなに大きくなければ、まだ心配ありません。逆に、借金の残高が巨大でも、ここ10年黒字が続いていて、借金は少しずつだが減っているというのであれば、それほど心配されないかもしれません。


企業会計を習ったことがある人には、資産や負債など、「貸借対照表」の項目がストック、収入や費用など「損益計算書」の項目がフロー、と言ってしまうのが一番簡単かもしれませんね。ここまで出てきた例を表にまとめておきます。


ストックとフローの違いは何でしょうか。フロー変数は、水量や体重やお金の量の、期間中の増減です。だから、期間が短いほど値が小さくなります。あなたの月収は、年収の約12分の1です。一方のストック変数は、ビデオを一時停止してプールの水量を見るようなイメージです。あなたの体重や銀行の預金残高を考えてみればわかりますが、見る頻度を年1回から2回にしたからと言って半分にはなりません。これがストック変数とフロー変数の違いです。


さて、それではストック変数とフロー変数の説明はこれくらいにして、練習問題をやってみましょう。

問1:
経済成長の指標となる、国内総生産 (GDP)は、ストック変数でしょうか、フロー変数でしょうか。

答え:
GDPは「その年その国で新たに作られた物の合計の価値」ですから、フロー変数です。今まで作って蓄積されたものではありません。新たに作られたものなのです。GDPは言ってみれば、その国の人たちのその年の年収です。したがって、「GDPがプラスで増えている。経済成長だ」と言うときは、個人で言えば年収が増えることに相当します。年収がずっと変わらなくても、少しずつ家具や家電を買い揃えて、車を買って・・・とすれば生活は豊かになるかもしれませんが、それは単に蓄積(ストック)が増えているというだけです。蓄積が増えるだけだと、経済成長とは言いません。経済成長の定義はGDPが増えること、つまりその国の人たちの年収じたいが増えていくことを意味するのです。


それでは、もう一つ問題です。

問2:
「貯蓄」はストック変数でしょうか、フロー変数でしょうか。


答え:
正解はフロー変数です。マクロ経済学で「貯蓄」と言ったら、これまでの蓄積の合計ではなく、その年の間に新たに蓄積された分だけを指します。個人の貯金で言ったら、銀行口座の残高のことではなく、残高の増分に相当するものを、マクロ経済学では「貯蓄」と呼ぶのです。以前、マクロ経済学では「貯蓄と投資は表裏一体」と説明しましたが、投資が、新たに機械設備などを積み増す活動であることからも、マクロ経済学が貯蓄と呼ぶものは、その年の新たな蓄積分であることが分かります。


では、貯蓄・投資によって何年もかけて蓄積された富は何と呼ぶでしょうか。次回はそれについてお話しします。


今日のポイント:
マクロ経済学では、何がストック変数で何がフロー変数であるかを分かっていることが大事である。

>> マクロ経済学の基本用語シリーズ(11)資本