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「抜けがけ」の色々な例

謎なぞです。
「自分1人だけやったら得をするけど、みんながやったら不幸になるものはなーんだ?」


答えは「抜けがけ」。あるいは「自分本位の行動」。みんなが「自分だけ」と思って勝手なことをしたら、結局お互いの損になったりしますよね。


では、そんな「抜けがけ」の例を、何でもいいので最低3つ挙げてください。


え、3つもないですって? そんなことはありません。私たちの周りは、するかしないかはともかく、潜在的な抜けがけの例であふれています。


例えば勉強が嫌いな大多数の子にとっての受験勉強がそうです。小説を読んだりピアノを弾いたりするのを我慢して、好きでもない科目を猛勉強しなくてはなりません。誰も勉強しない場合も、全員が必死に勉強する場合も、受かる確率は同じです。だったら、受験生みんなで取り決めをして勉強しなければ、みんなハッピーです。 もちろん、そんな取り決めをしても、みんな自分だけは勉強しようと思います。その方が受かる確率が上がりますから。


抜けがけ的に自分1人だけが行うなら得をするが、結局みんなやるので誰も得しない、そういう例は受験対策だけではありません。「がんばって残業すること」もそうです。1人だけやるなら褒められますが、みんながやったら当たり前になってしまいます。当たり前になったら、自分だけ定時で帰る訳にもいきませんよね。


みんながやったら結局誰も得しないことの例は、ビジネスにもあります。証券投資の会社が、他社より0.01秒でも早く取引注文できるように、何千万円もかかる設備を導入するのがそうです。自社だけが導入するなら競争に有利ですが、全ての会社が導入したら結局誰も得しません。もちろん、他社が導入しているのに、自社だけやらなければ競争に負けてしまいます。


こんな皮肉な事例もあります。ある国では、小学校に通う自分の子供のために、親たちは担任の先生に「日頃の感謝の印」と言って、高額な贈り物をするそうです。40人学級の先生が、全ての子供の面倒を親身に見てあげるのは困難です。そして先生も人間ですから、贈り物をくれた親の子弟には、特に注意がいくことでしょう。残りの親も、自分の子供の教育が後回しにならないように、やっぱり先生にギフトカードを贈りはじめます。でも、全ての親が贈り物をしたら、誰も贈り物をしなかったときと比べて、子供が受ける恩恵は変わりません。PTA会議を開いて、「皆さん、先生に贈り物を贈るのはやめましょう」と言って、自分だけこっそり贈り続けようと思ってもダメです。そうやって、やっぱり全員がこっそり先生に贈り物をするからです。

囚人のジレンマの定義

これらの状況には「囚人のジレンマ」という名前が付いています。名前の由来は次回説明することにして、今回は定義を覚えましょう。以下の3つの条件を満たす状況のとき、「囚人のジレンマに陥っている」と言います。

  1. 各々のプレーヤーには、他プレーヤーとの「協調・歩み寄り」に相当する選択と、「抜けがけ・身勝手」に相当する選択の2つがある。他のプレーヤーが身勝手に行動しているときは、自分も身勝手に行動するのが得である。
  2. 他のプレーヤーが協調的なときでも、やはり自分は抜けがけした方が得をする。
  3. 皆が身勝手だと、皆が協調的なときと比べ、皆にとって不幸である。


1と2は、「他の人がどうしようと、自分は身勝手に振る舞うのが得」ということを表しています。みんながそう考えるので、結局みんなで不幸になってしまうのです。


一つ一つの状況が、囚人のジレンマ的と言えるかどうか、定義に照らし合わせて判断できるように訓練しましょう。例えば、受験生の多くが受験対策をスポーツのように楽しんでいるのだとしたら、受験戦争は囚人のジレンマとは言えません。条件3を満たさないからです。また、「自分だけ抜けがけすると心が痛む」という場合も囚人のジレンマとは言えません。条件2を満たさないからです。


次回は「囚人のジレンマ」という名前の由来を見ながら、イメージをしっかり定着させていきましょう。

>> 囚人のジレンマ(2)名称の由来