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例2.期待値


経済学に出てくるベクトルと内積の例をもうひとつ挙げます。


今、ある宝くじの1等から4等ハズレまでの各確率が1等は 5%(=0.05),2等は10%(=0.1),3等は20%(=0.2),4等は65%(=0.65)であるとしましょう。確率 (probability) の頭文字をとってこれを

    \begin{eqnarray*} p = (p_1, p_2, p_3, p_4) = (0.05, 0.10, 0.20, 0.65) \end{eqnarray*}


と書くことにします。確率が4つあるのでそれを並べただけですが、経済学ではこれを「確率ベクトル」と呼びます。


一方、この宝くじの当選金は、1等が10万円、2等が5万円、3等は2万円、4等ハズレでも1万円、という設定とします。すると「当選金ベクトル」は、お金 (money) の頭文字をとって

    \begin{eqnarray*} m = (m_1, m_2, m_3, m_4) = (10, 5, 2, 1) \end{eqnarray*}


と表わすことができます。


このくじの当選金の期待値はいくらでしょうか。期待値は当選金とそれに対応する確率を各々かけあわせて、最後に足し合わせたものでしたね。勘のいい人はもうお気づきかもしれませんが、これはpmの内積になります。当選金の期待値は

    \begin{eqnarray*} pm &=& p_1m_1+ p_2m_2+ p_3m_3+ p_4m_4 \\ &=& 0.05\times10 + 0.1\times5+0.2\times 2+ 0.65\times 1\\ &=& 2.05 \end{eqnarray*}


で、答えは2.05万円となります。


この例の確率変数は賞金ですが、とくに賞金である必要はありません。気温、点数、株価、なんでもOKです。期待値は、確率のベクトルと実現値のベクトルとの、内積だと理解してください。


次回は加重平均です。確率の代わりに、確率と同様、合計が1になるような「加重(ウェイト)」を表すベクトルを使って内積を計算します。

>> 経済学におけるベクトルと内積(3)例3.加重平均