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景気循環

一人あたりのGDPは、生産活動の活発さの指標であり、経済的な豊かさの指標としても使われます。これを毎年計算して折れ線グラフにしたとしましょう(厳密には対数をとってからグラフにします)。すると、政治的に安定した国では、通常は次のグラフの赤い線のような経過をたどります。



長い目で大まかに見ると青い点線のような上昇傾向がありますが、実際に細かく見ると、赤い線のようにうねうね波打っているのです。長期的な傾向を英語で「トレンド」と言いますが、GDPには青い線のような上昇トレンドが見られます。これが、「経済成長」と呼ばれる現象です。一方、このトレンドの周りでの浮き沈みが「景気循環(ビジネスサイクル)」と呼ばれる現象です。「長期的なトレンドが経済成長、短期的な浮き沈みが景気」と覚えてください。


まずは景気循環についてイメージをつくりましょう。循環とかサイクルとか言っても、海の波のような一定の周期があるという意味ではありません。GDPの増え方が、長期のトレンドと比べて、特に速いときと少し鈍るときがあるというだけの意味です。傾きがトレンド線より急なところが好況、緩やかなところが不況に相当します。


浮き沈みはできるだけ無い方がよいとされており、不況のときは政府の景気対策や、中央銀行による金融緩和が行われます。逆に、景気が「過熱している」と思われるときは、金融引締めが行われます。「好況はいいことなんだから、放っておいてもいいんじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、過度な好景気のせいで無駄 (misallocation) やリスクが蓄積してしまうと、大不況の原因になると考えられているのです。


今日のポイント:
GDP増加の長期的なトレンドが経済成長、短期的な浮き沈みが景気である。


次回は青いトレンド線の方、すなわち経済成長についてお話しします。


>> マクロ経済学の基本用語シリーズ(9)経済成長