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なんでも偏差値

標準偏差が分かると便利なことの2つ目は、いろいろな物の「偏差値(へんさち)」が計算できるようになることです。もし今度先生が「今回のテストのクラスの平均点は〇〇点でした」と言ったら、「先生、クラスの標準偏差が何点だったかも教えてください」と聞いてみるのもいいかも知れません。クラスの平均と標準偏差の両方が分かれば、みんなこっそり自分の偏差値を計算できます。標準偏差と偏差値は名前が似ていますが、混同しないように気をつけましょう。偏差値は人それぞれ、一方の標準偏差はクラスに1つです。


平均を「偏差値50」とし、平均より標準偏差1個分高いと「偏差値60」、2個分高いと「偏差値70」であると言います。逆に平均より標準偏差1個分小さいと「偏差値40」です。偏差値が計算できると「すごさ」「類いまれさ」が実感できます。これはテストやスポーツの成績に限りません。


偏差値は「成績」以外にもつかえる

たとえば、「A市の年間降水量の過去30年間の平均は4500ミリですが、なんと今年は5000ミリでした」と言われても、どれくらいすごいのかピンと来ません。でも、「ちなみに過去30年の標準偏差は250ミリです」と教えてもらえれば、「今年は偏差値70の年だな、珍しいなあ」と分かります。


標準偏差や偏差値が浸透していないため、すごさや類いまれさを伝えるために、代わりに「順位」を言うことがあります。たとえば、「47都道府県の中で2位」といった具合です。しかし、順位は「すごさ」を過大評価してしまうことがあります。ドングリの背比べのような状況で、たまたま2位だったのかもしれませんよね。実際はビリの県と大差ない、ということもあります。


試験の結果だけでなく、様々な分野で偏差値を公表する習慣があれば、生活にもっと統計学が浸透する気がします。その偏差値を求めるために、「標準偏差」の情報が必要なのです。


前回、格差の話をしたので、ここで格差と偏差値の関係を話しておきましょう。平均よりも20点高い子の偏差値がいくつになるかは、標準偏差によって決まります。標準偏差が小さいグループは、格差が小さい、みんな似たり寄ったりのグループです。格差が小さいグループで他の子よりずっと高い点数を取ることができれば、「飛び抜けている」ということになって、偏差値が大きく出ます。


それでは、次回はいよいよ、実際に標準偏差を計算する方法を勉強することにしましょう。

>> 標準偏差を役立てよう(3)計算のしかた