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間隔尺度

前回、「比例尺度」では、1の意味を自由に決めてよいことを説明しました。これに対し、0の意味も1の意味も、両方とも決めてよいのが、「間隔尺度」です。


例えば、「温度」の単位には、摂氏(せっし)、華氏(かし)、K(ケルビン)などがありますが、0度の意味も100度の意味もばらばらです。摂氏0度は氷が溶け始める温度(融点)ですが、華氏0度は極寒の気温です。また、摂氏100度は水が沸騰する温度ですが、華氏100度は猛暑日の気温くらいに過ぎません。あなたが自分専用の温度の単位を作ろうと思ったら、「0度」と「1度」の場所を決める自由があります。


温度は「間隔尺度」です。間隔尺度の単位は、どこでも2箇所を自由に決められます。「自分の平熱を0度、水の沸点を10度とする」といった具合です。2箇所決めれば、あとは全て自動的に決まります。というのも、温度の単位には「異なる温度の水を同量ずつ混ぜたら、ちょうど中間の温度になる」というルールがあります。ですから、「私の平熱は0度、水の沸点は10度」と決めた時点で、熊谷市の最高気温を9度とすることはできません。あなたの平熱より少し高いくらいですから、およそ0.8度だと決まってしまうのです。


ゲーム理論の「利得」の単位は、温度の単位と似ています。利得0が、「何も食べないこと」「何ももらえないこと」を意味するという決まりはありません。また、温度の単位と同じように、自由に決められるのは2箇所までです。というのも、ゲーム理論では、「チョコレートをもらったときの嬉しさが1、ケーキをもらったときの嬉しさが2だとしたら、ケーキまたはチョコレートが半々の確率でもらえることの嬉しさは、真ん中の1.5でなければならない」というルールがあるからです。


しかし、2箇所までは自由なので、ふつうは「利得0」「利得1」の位置と大きさを、計算に都合がいいように適当に決めます。これも経済学では、単位の「基準化」と呼びます。