経済学に出てくる「均衡」という言葉。英語では equilibrium といいます。liに強勢を置いて、イクウィ・リー・ブリウムと発音します。


日本語の「均衡」は日常生活でも時々使う言葉ですが、英語のequilibriumはあまり日常では聞きません。「体の均衡を保つ」とか「収入と支出の均衡」などと言うときは、balance(バランス・釣り合い)という言葉を使います。


でも、一度だけ、経済学以外の文脈でequilibriumという単語に遭遇したことがあります。小説「ゲド戦記」です。小説の主人公ゲドは、魔法学院で魔法を学び始めますが、すぐに見せかけだけの魔法に満足できなくなります。そして、魔法を教授する長(おさ)の一人に質問します。石ころを一時的にダイヤモンドに見せるだけではなく、永久にダイアモンドに変えるにはどうしたらいいか。これに対して長が答えます。


“The world is in balance, in Equilibrium.”


世界には均衡があり、たった1つの石ころであっても、魔法使いはむやみにその本質を変えるべきではない、というのです。同じ均衡でも、balanceよりずっと重々しい言葉です。アダム・スミスが「見えざる手」によって保たれると言った、経済の均衡のイメージにもぴったりの言葉ですね。


この単語はぜひ、正しいアクセントとともに覚えたいところです。ちなみに、複数形にすると equilibrium が equilibria となります。複数にしたとき「語尾の um が a に変わるラテン語由来の単語」です。他には

premium(プレミア)、medium(メディア)、bacterium(バクテリア)、millennium(ミレニアム)、optimum(最適)

などがあります。Equilibrium(均衡)もその仲間なので覚えておきましょう。