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下準備
「カラテ・キッド」という1984年のアメリカ映画があります。いじめられっ子の主人公ダニエル君が、空手の達人ミスター・ミヤギに弟子入りするのですが、毎日やらされるのは「車のワックスがけ」や「塀のペンキ塗り」ばかり。見習いの登竜門だと思って辛抱していたダニエル君ですが、しまいには堪忍袋の尾が切れます。しかし、実は全てが空手の動きを習得するための修行だったのです。それがダニエル君に明かされる場面は、気分がスカッとする人気のシーンです。
今回はみなさんに、ダニエル君になってもらわなくてはなりません。目標は「クーポン債の価格理論」ですが、今回は全く関係なさそうな「算数の文章題」や「中学の連立方程式」の話をします。それでも飛ばさずに、辛抱して目を通してください。全てはクーポン債の理論のためだったことが、遅かれ早かれ明らかになるはずです。
1問目
リンゴが1個0.98ドル、バナナが1本0.96ドル、みかんが1個0.94ドルだとします。リンゴ10個、バナナ10個、みかん110個が入った詰め合わせセットの値段はいくらになるか答えなさい。
解答
式は
となります。よって答えは122.8ドルです。経済学では、特に断りがない限り、まとめ買いすることによって割安になったりしません。それぞれの単価に個数をかけて合計するだけです。
2問目
今、詰め合わせセットが3種類売られていて、市場でついている価格は
・セット1が「リンゴ101個」で98.98ドル
・セット2が「リンゴ3個、バナナ103個」で101.82ドル
・セット3が「リンゴ2個、バナナ2個、みかん102個」で99.76ドル
です。このとき、リンゴ、バナナ、みかんそれぞれの単価を求めなさい。
解答
リンゴ1個、バナナ1個、みかん1個の値段をそれぞれドル、ドル、ドルとすると
という連立方程式が立ちます。たとえば2番目の式の意味はこうです。リンゴが1個ドル、バナナが1個ドルならば、リンゴが3個、バナナが103個入っているセット2の値段はです。市場でついている値段101.82はこれに等しいはずですね。残りの2つの式も同じように解釈してみてください。
この連立方程式を解くと、です。1つめの式からが求まるので、それを2つめの式に代入すれば、も求まります。そうやって順番に求めていくと、リンゴは1個0.98ドル、バナナは1個0.96ドル、みかんは1個0.94ドルだということになります。
さあ、これでワックスがけもペンキ塗りも終わりです。次回からは本当にクーポン債の価格理論に入ります。
>> クーポン債の理論(3)クーポン債は、割引債の詰め合わせセット
リメイク版もありますが、やはりオリジナルがお薦めです。