マクロ経済学の教科書のまとめ(随時更新)です。教科書ごとに、レベル、事例やデータの豊富さ、説明のアプローチ・方法をまとめました。凡例は以下の通りです。
レベル
1: 学部初級,2: 学部中級〜上級レベル,3: 学部上級〜修士レベル
事例・データ
過去の事例やデータが豊富に紹介されていれば★★★、少なめであれば★
アプローチ(以下の5つに分類)
A. 総需要と総供給のモデル
B. いわゆるケインズ経済学(グラフで)
C. いわゆるケインズ経済学(式で)
D. その他のモデル(労働サーチ、成長論)
E. ミクロ的基礎づけ
クルーグマン(第2版)
レベル: | 1. 学部初級 |
事例・データ: | ★★★ |
アプローチ: | A. 総需要と総供給のモデル |
見た目: | 三色刷りできれい |
- ・クルーグマンの専門である「国際貿易論」に関する章が充実。
- ・一方でマクロ経済の数式モデルはほぼ無し。「財政政策」を論じる章でも、45度線分析モデルは補論にあるのみ。IS-LMモデルは触れられていない。
アセモグル・レイブソン・リスト
レベル: | 1. 学部初級 |
事例・データ: | ★★★ |
アプローチ: | A. 総需要と総供給のモデル |
見た目: | 二色刷りで読みやすい |
アセモグルは経済成長論の大家なので、やはり、経済成長や途上国の経済発展に関する章が充実。
マンキュー(第4版)
レベル: | 1. 学部初級 |
事例・データ: | ★★ |
アプローチ: | B. いわゆるケインズ経済学(グラフで) D. その他のモデル(労働サーチ、成長論) |
見た目: | 二色刷りで読みやすい 日本語訳は上下巻に分かれている。 |
- ・45度線分析モデルやIS-LMモデルを扱う分、上記のクルーグマンの教科書やアセモグルらの教科書よりも数理的。
- ・ただし、モデルの説明は式よりもグラフが多い。
- ・また、資本と労働による生産関数も説明されている。
ブランシャール
レベル: | 1. 学部初級 2. 学部中級〜上級レベル |
事例・データ: | ★★ |
アプローチ: | C. いわゆるケインズ経済学(式で) D. その他のモデル(労働サーチ、成長論) |
見た目: | 二色刷りで読みやすい 日本語訳は上下巻に分かれている |
- ・45度線モデルやIS-LMモデルをできるだけ正確に説明している。
- ・マンキューの教科書よりも数式は多め、グラフによる説明は少なめ。
- ・IS-LMの枠組みをがんがん発展・応用。
ウィリアムソン
レベル: | 2. 学部中級〜上級レベル |
事例・データ: | ★★ |
アプローチ: | D. その他のモデル(労働サーチ、成長論) E. ミクロ的基礎づけ |
見た目: | 二色刷りで読みやすい 日本語訳は上下巻に分かれている |
- ・事例は少ないが、過去のデータは豊富。
- ・学部レベルでありながら、「ミクロ的基礎づけのあるマクロ経済学」であり、最初の方から「効用最大化」が出てくる。
- ・2020年現在、翻訳が原著第3版(2008年)のものと古く、そのため最新の原著には出てくるサーチの理論が翻訳には出てこない。
二神・堀(第2版)
レベル: | 2. 学部中級〜上級レベル 3. 学部上級〜大学院修士レベル |
事例・データ: | ★ |
アプローチ: | C. いわゆるケインズ経済学(式で) D. その他のモデル(労働サーチ、成長論) E. ミクロ的基礎づけ |
見た目: | 一色刷り |
学部レベルで「ミクロ的基礎づけのあるマクロ経済学」を追求し、大学院レベルにつながっていくような内容を目指している。文中であえて学術論文を引用していることや、終盤でラムゼー・モデルなど大学院レベルの内容を扱っていることからも、その姿勢がうかがえる。