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例3.加重平均


前回は「期待値」を内積として計算しました。今回は、「加重平均」を内積で計算してみます。


たとえば、80点、60点、40点を取った生徒の割合がそれぞれ50\%, 30\%, 20\%である場合の、平均点を考えてみましょう。それぞれの点数を取った生徒の割合 0.5, 0.3, 0.2を重み(ウェイト)として加重平均を取ればいいので、平均点は

80点 × 0.5 + 60点 × 0.3 + 40点 × 0.2 = 66点

です。ここで、重みも確率と同様に合計が1になるので、加重平均も期待値と全く同じように、2つのベクトルの内積で表せます。すなわち、点数(score)のベクトルと重み(weight)のベクトルをそれぞれ

    \begin{eqnarray*}s &=& (s_1, s_2, s_3) = (80, 60, 40)\\w &=& (w_1, w_2, w_3) = (0.5, 0.3, 0.2)\end{eqnarray*}


と置けば、クラスの平均点は

    \begin{eqnarray*}sw &=& s_1w_1 + s_2w_2 + s_3w_3 \\&=&  80 \times 0.5 + 60 \times 0.3 + 40 \times 0.2\\&=& 66\end{eqnarray*}


です。

ファイナンスへの応用

ファイナンスで習う、「ポートフォリオの収益率」は加重平均の一例です。今、A, B, Cという3つの株式銘柄で構成されたポートフォリオの収益率を考えてみましょう。それぞれの収益率は、R_A = 8\%, R_B = 6\%, R_C = 4\%だったとしましょう。収益率はReturnの頭文字をとってRで表しています。今、投資資金のうち、5割を株式A、3割を株式B、2割を株式Cに投資したポートフォリオを考えます。個別銘柄の収益率のベクトルと、ポートフォリオへの組み入れ比率のベクトルはそれぞれ

    \begin{eqnarray*}R &=& (R_A, R_B, R_C) = (8, 6, 4)\\w &=& (w_A, w_B, w_C) = (0.5, 0.3, 0.2)\end{eqnarray*}


となります。


ここでは詳細は省略しますが、ポートフォリオの収益率は、個々の銘柄の収益率を、ポートフォリオ組み入れ比率を使って加重平均したものです。内積で表すことができて

    \begin{eqnarray*}wR &=& w_AR_A + w_B R_B + w_CR_C\\ &=& 0.5\times 8 + 0.3\times 6 + 0.2\times 4\\ &=& 6.6\%\end{eqnarray*}


が答えとなります。


内積の計算に慣れたら、次は「行列の掛け算」を勉強してみましょう。