「平均」という言葉は私たちの生活に浸透しています。「3年3組の英語の平均点」とか、「東京の8月の平均気温」とかいった具合に、生活の中でよく耳にしますね。多くの人が、平均の求め方を知っています。数字を全部足し合わせて、頭数で割ればいいのです。
ところが、同じくらい便利な概念である「標準偏差(ひょうじゅん・へんさ)」の方は、なぜか人々の生活に浸透していません。標準偏差まで知っている人は少数派です。
でも、標準偏差を計算すると便利なことが2つあります。
ひとつは、グループ内「格差」がどれだけ大きいかに関して、2つのグループを比べられるようになることです。たとえばテストの平均点が、A中学校は50点、B中学校は60点だったとしましょう。平均だけ見て、「教師として赴任するならB校の方が楽そうだなあ」と言うのは早合点です。例えばこんなことがあり得ます。A校の方はみんな平均の50点前後でバランスが取れている。一方、B校の方は0点の子も100点の子もいっぱいいて、結果的に平均は60点だが、格差が大きい。
このように、平均だけ見ても、格差のことは全く分かりません。標準偏差は「格差がどれくらいあるか」を教えてくれる、1つの指標なのです。
標準偏差は格差の指標
標準偏差の計算の仕方は後で説明しますが、そのイメージは「平均からのギャップの平均」です。平均が50点でも、実際にはそれより10点高い子もいれば、20点高い子もいます。それぞれの子の平均からのギャップを計算し、そのギャップの平均的な値を、「格差」の指標として使おうと言う訳なのです。標準偏差が0であるとは、格差がゼロ、つまり全員が同じ点数だったということです。逆に、標準偏差が20点であるとは、平均は50点でも、実際には70点以上の子や30点以下の子も普通にたくさんいたということです。
このように、標準偏差はグループ内の格差やバラツキを表す指標なのだ、と思ってください。次回はこの標準偏差を知ると便利なことの2つめを説明したいと思います。
>> 標準偏差を役立てよう(2)なんでも偏差値